若松町 牛込 別所温泉 東京 上野

てゐた。自分はそこ／＼に外へ出て、若松町から電車に乘つたが、すつかり滅入つた氣分だつた。一ヶ月前の咯血

やつたので、兎に角ひどく厭な氣分の日だつた。牛込にＫを訪ねたが、Ｋはやう／＼床の上に起きあがれる程度で、

はひつてゐた郷里の長男からの手紙と、信州の別所温泉から出したＳからの繪葉書とを、盃を舐めながら讀んで見た。

は無論ないのだ。昨日――九月九日のある東京新聞の栃木版に、生ける屍の船長夫妻と云ふ見出しで、船の

今日は東京で、親しい友人の著作集の出版記念會に、自分も是非出席しなけれ

つちまふんぢやないかな？　うまく汽車に乘り込めて東京にはひれたとしても、大したことはあるまいね。新米の

「Ｓたちはどうしたらう。もう東京に歸つたか知ら。それともまだ別所に滯在してゐるのか知ら？」

「それなら、東京へでも出て、どこかいゝとこへでも奉公して見たらどう

四五日前東京から、若い友だちのＡ君が、下宿に溜つてゐた手紙類や

下りて、山々は日一日と目だつて色づいて來た。東京の十一月の中頃の氣候を思はせた。彼が歸る日は珍らしく

部屋で、蟄息的な生活を續けて來た。「東京へ出たまへ。明るい世界へ出たまへ。こんなところに居ると、君

さびしき妻より――東京から※されて來た妻の手紙の文句の後に、斯う書いて

忠海町から急行でやつて來たのを夫婦でのこ／＼東京驛に出迎へた――その時のことを、正直に、素直に書いた

」自分は鳥屋からツーリングを呼んで貰つて、すぐ上野驛へ駈けつけたのだつた。