日本婦道記 おもかげ / 山本周五郎
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叔母からはおりおり音信があった。師山の大師堂へ紅葉を観にいったとか、九頭竜に下り鮎がみえたとか、鶴
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ながら、走るような足どりで下元禄というところまでゆき、平等院という菩提寺の墓地へとはいっていった。弁之助はわけのわからぬまま
申上げそろ」というごく簡単なものだったが、「さっそく平等院へまいり、御墓前にてめでたき仔細あらまし申しつぎまいらせそろ」うんぬんという一節がはげしく胸
たまま眼をつむり、ふかくふるえるように溜息をついた。平等院の墓地がありありと見えるようだった。塾からの帰りにまわりみちをして
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なかごろ、父の民部は御主君飛騨守信房のお供をして江戸へ立った。大目付から用人に抜擢されたので、おそらくそのまま江戸詰
「江戸へまいっておちついたらおまえもよび寄せるが、まず二三年はそのいとまもないだろうと
が亡くなって間のないときだし、今また父が遠く江戸へ去ると聞いて、弁之助は胸がいっぱいになるほど悲しかったが、――
いって厳しく叱られた。彼が父にあてて、早く江戸へ呼んで呉れるようにと、たびたび手紙を出すようになったのはその頃
と祈ったものであった、そうすれば父が自分を江戸へひきとって呉れるだろうと思ったから、……然し冬になっても、その
ませんよ」と注意された、「あなたはもうすぐ江戸へいらっしゃるのですから、田舎で秀才などといわれる者も江戸へゆけば掃い
へいらっしゃるのですから、田舎で秀才などといわれる者も江戸へゆけば掃いて捨てるほどいるのですからね、つまらぬ虚名におもいあがるようだ
に、彼の待ちに待ったときがやって来た。江戸の父から出府するようにという知らせがあったのだ、どんなに大きなよろこび
立っていった。……田舎で秀才といわれる者も江戸へゆけば、そう云われた叔母の言葉が頭に刻みつけられていたの
やまかわと季節のうつりかわりを記したものが多かった。江戸は繁華でこそあるがどこもかしこも家やしきばかりで眼をたのしませる風景の変化
彼の眼をみつめながら云った、「おまえはひところ頻りに江戸へ呼んで呉れと手紙をよこした、叔母の躾けのきびしさに堪えかねて
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出府するとすぐから勉強にかじりついた。主家のかみ屋敷は上野池の端にあり、ちょっと出ればけんぶつする場所も少なくなかった。父も少しあるい