湯島 本所 本郷 江戸 根岸 湯島天神 水戸 長崎 下谷 神田 麹町 日本橋 御徒町

起き直って、苦しそうに喉を押えながら云った、「この湯島の荒巻っていう人と、天神下の先生などにもまえから頼まれていまし

「おと年の暮までは本所の業平にいたんです」と女主人は云った、「舟八百屋をやっ

町へいったことはなかった。――そしてその日、本郷の通りを湯島天神のほうへ曲ったとき、彼はようやく去定のいく先

「このまえ本郷の通りで、わざと先生にぶっつかって文句をつけたやつです」

「私には江戸に約束した娘がいたのです」登はむきになって云った、

みくみ町から下谷へまわり、根岸の寮で寝ている穀物問屋の隠居をみまった。それから神田の商家、

ことはなかった。――そしてその日、本郷の通りを湯島天神のほうへ曲ったとき、彼はようやく去定のいく先に見当がつい

悪いのは畳だ、昔はあんな物は使わなかった、水戸の光圀は生涯、その殿中に畳を敷かせなかったという、それは

は半年ばかり療養したうえ、ほぼ健康をとり戻し、一人は水戸在の実家へ帰ったが、残った一人は逃亡してしまった。

登はちょっと口ごもった、「はあ、長崎にいたとき、三度ばかり」

登は頷いた。それは彼が長崎へ遊学したときのもので、各科の病理や解剖、治療、調剤に

いたところが、先生はそれを嫌って門下をはなれ、長崎へいって蘭方の医学をまなばれたということだ」

筆記で覚えたのだろう、と思ったのであるが、長崎へ遊学したことがあるというと、自分などより新らしい知識を持って

みくみ町から下谷へまわり、根岸の寮で寝ている穀物問屋の隠居をみまった。それ

ならず者が暴言を吐いた、そのときがまんなすった怒りが、下谷へゆく途中から出はじめたのだと思います」

寮で寝ている穀物問屋の隠居をみまった。それから神田の商家、鍛冶橋御門の中の松平隠岐邸と、次つぎに八カ所

いるそうだ、もしそうする気があるのなら、いちど麹町の家へいって来るがいいだろう」

うち、三度めにいやなことがあった。それは日本橋白銀町の、和泉屋徳兵衛という質両替商で、四十一歳になる妻女が

「御徒町の」と男は喘ぎながら云った、「――井田の若先生です」

庵は養生所の医員である、父の玄丹とともに、御徒町で町医を開業しているが、親子二人とも、かよいで養生所の診療に