赤ひげ診療譚 08 氷の下の芽 / 山本周五郎
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た、「つまりお杉を嫁に欲しい、自分のことは神田佐久間町の大工、藤吉という者がよく知っているから、藤吉に訊けば自分の
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かねは蒼くなり、ひょろひょろとよろめいた、「町奉行が怖くって江戸の町が歩けるかってんだ、曳かれ者の小唄みたいなことを云いなさん
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「たじたじだったね、お杉の親元が荏原郡にある、そちらとも相談してみるが、自分には異存はない、と
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、妹が二人いる。おえいは十歳のときから、下谷池之端仲町の「近六」という、蝋燭問屋に奉公していたが
おえいは十歳のとき、下谷の蝋燭問屋へ奉公先を替えた。すると半年ほどして、姉が
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た。彼女がひどく老けたことを、登は認めた。長崎へゆくまえに逢ったときの、色濃い嬌しさや、眩しいほど華やか
「長崎遊学から帰ったとき、すぐその手配をする約束であったが」と源
「私はそれが望みだった、長崎では私なりに勉強し、会得した治療法もある」と登は
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の前借りをするのである。おりつは十一の年、深川の芸妓屋へ奉公に出され、給銀の借りが溜ったので、
「そのときあたしは八つで、深川の八幡前にある煎餅屋へ子守りにいってました」とおえいは
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定も外診を休んで指図に当った。保本登は麹町の家へゆく約束があり、去定から三度ばかり注意されたが
、「あとは森と二人でやるから、支度をして麹町へゆくがいい、もう三時をまわったぞ」
麹町の家には天野源伯夫妻とまさをが来て待っていた。
「麹町で天野と会ったか」と去定はまったくべつのことを訊いた。
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いま二十三になるが、幾たびもくら替えをしたのち、千住の遊女屋に勤めているらしい。兄の次郎は二十歳で、どこかの土方