赤ひげ診療譚 06 鶯ばか / 山本周五郎
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朝の七時ころ、五郎吉は妻子を伴れて、「浅草寺へ参詣にいって来る」と断わり、戸閉まりをして出ていった。
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れるその一帯の土地は、松平伊豆守の広い中屋敷と、寛永寺の塔頭に挾まれて、ほぼ南北に長く延びていた。表通りには僅か
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ことである。――知りあってからまもなく、二人は江戸を出奔して水戸へいった。おふみが岡場所へ売られることになったの
のことで、どうにもくらしてゆけなくなり、とうとうまた江戸へ帰って来てしまいました」
江戸へ帰ってからもいいことはなかった。この三年ばかりこっち、五郎吉は
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たのはなぜだと、去定が訊いた。登は長崎にいたとき、蘭医から教えられたのだ、と答えた。頭の
一と月と寝るようなことがよくあった。去年、長崎から帰るとすぐ、養生所へはいってから約一年、登は頑固に家
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―知りあってからまもなく、二人は江戸を出奔して水戸へいった。おふみが岡場所へ売られることになったので、彼に
「水戸に三年いて、そのあいだに虎吉と長次が生れたんですけれど」
ああ、とおふみは思いだしたように微笑した、「水戸を立退くまえに、親子で大洗さまへいきました、弁当を持って半日
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五郎吉は深川、おふみは板橋で生れた。どちらも家が貧しく、五郎吉は七つ
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あまです」と卯兵衛も側から云った、「こつ(千住の遊廓)で年期いっぱい勤めあげたという古狐で、知らねえもんだから店
彼女は千住で勤めているうち、深い馴染客が三人できた。その一人と夫婦約束
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下旬の或る日、登は去定の許しを得て、麹町三番町の父母を訪ねた。十日ほどまえ、母が足を病ん
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た。べつに変ったようすはなかった。そもそも家族そろって浅草へいく、ということが常にないことなので、なにか変った
朝の七時ころ、五郎吉は妻子を伴れて、「浅草寺へ参詣にいって来る」と断わり、戸閉まりをして出ていっ
「浅草へいくと云ったのは嘘で、すぐに戻って来たんですな
おふみは浅草並木町のめし屋に奉公していたとき、五郎吉と知りあった。彼
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た。彼は薬種問屋から暇を出され、そのときは蔵前で荷揚げ人足をしていた。五郎吉が二十一、おふみが二十のとき