赤ひげ診療譚 04 三度目の正直 / 山本周五郎

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地名一覧

四日市町

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というのは、やはり「大政」から出た大工で、四日市町に住んでいる。女房のおつなは料理茶屋の女で、はたらいているあいだ

神田佐久間町

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供をして外診に廻ってい、その時刻には神田佐久間町の、藤吉という大工の家で、猪之という男の診察をして

浅草寺

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あいだ、お松に暇が出たので、さそい合わせて浅草寺へ参詣にゆき、その帰りに駒形の鰻屋で飯を喰べた。鰻が焼け

江戸

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使うことになったんです、その下準備ができて、江戸を立つ三日まえのことでしたが、猪之が急におれも伴れて

四十日近くもかかった。こうして三月になり、江戸から建具屋が職人を伴れて来たが、そのすぐあとで猪之がひょっこり

た。大工の仕事はもう手が余っている、半分は江戸へ帰そうとしていたときなので、藤吉はおかしいなと思い、なに

――おい、正直に云え猪之、なにがあって江戸にいられなくなったんだ。

の普請は長びき、二度も「大政」の頭梁が江戸から見に来たくらいだったが、それでも梅雨にかかるまえには仕上げる

いなば」というその店は堅い小料理屋だが、せんたく町は江戸の岡場所に似たようなところだから、そんなにむずかしく構える必要はない。自分

話して来い、と藤吉は云った。もう二三日すると江戸へ引揚げるんだ、いそがねえと置いてっちまうぜ。うん、そうしよう、と猪

帰って来て、おれはこれからすぐ、一と足先に江戸へ立つ、と云いだしました」

――あいつがいっしょに江戸へゆくって云うんだ、冗談じゃあねえ、と猪之はそわそわしながら云った

そんな暇はない、と猪之は答えた。わけは江戸へ帰ってから話す、おせいのやつ怒ってたから、ここへ押しかけて来る

――あにき、江戸へ帰ったらおれを、気の済むまでぶん殴ってくれ。

そうである。あんなやつは男ではないから始まって、江戸の人間ぜんたいを泥まみれにし、粉ごなにし、「土足で踏みにじるようなあんばい

めの徳利を取って、手酌で注ぎながら云った、「江戸へ帰ってからまもなく、あっしのほうの縁談が急に進んで、五

そこへ案内して、いきなりうれしいわと抱きついた、もうすぐ江戸へ帰るそうだけれど、そのときいっしょに伴れていってくれ、騙すと承知し

佐久間町

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いう、商家の隠居を診にいったので、帰りに佐久間町へまわったのであった。

しているあいだに、足のほうもかなり達者になり、佐久間町へ着いたときには、藤吉はまだ家で飯を喰べていた。登

で、五月の末におちよを貰い、あっしたちは佐久間町のいまのうちへ移りました」

藤吉夫婦が佐久間町へ移ったあと、猪之はいちど頭梁の家へ戻り、半年ほどし

でしょう。おちよが熱心にそう云うので、正月中旬に佐久間町へ引取った。

「佐久間町が来そうなものじゃないか」と登はもう一と皮切り込んでみた

駒形

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で、さそい合わせて浅草寺へ参詣にゆき、その帰りに駒形の鰻屋で飯を喰べた。鰻が焼けて来るまで、酒を飲みながら話

水戸

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が取れるとすぐ、あっしは水戸へゆくことになった、水戸の相模屋という、海産物商の隠居所を建てる仕事で、大工、左官、

は云った、「正月の松が取れるとすぐ、あっしは水戸へゆくことになった、水戸の相模屋という、海産物商の隠居所を

――そんな娘がいるのに、どうして水戸へゆこうというんだ。

も用心した」と藤吉は云った、「それで、水戸の仕事が終って、帰ってから話をきめる、それまでは内談という

藤吉は水戸へゆき、相模屋の普請にかかった。仕事のことは関係がないから略す

「しょうがねえ、追い返すのも可哀そうだから、そのまま水戸へ留めておきました」と藤吉は云った、「但し、あっしは但し

のであった。自分からは云いださなかったけれども、水戸へ来て半月ばかりすると、ようすがおかしくなった。職人たちは普請場

「その」と登が訊いた、「水戸のおせいとはどういうことがあったんだ」

福井

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近江屋は浅草御門外の福井町にあり、奥座敷の模様替えをするため、去年の冬のはじめに一と

日本橋

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あたらし橋を渡って、日本橋のほうへ向かいながら、藤吉は話し始めた。

猪之は藤吉より二つ年下で、十二歳のとき、日本橋堀江の「大政」という、大工の頭梁の家へ弟子入りをし

住吉

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、それでその居酒屋へはいきにくくなり、六丁もはなれた住吉町に河岸を替えなければならなかった。

こんども居酒屋の女であった。住吉町の「梅本」という、ちょっとしゃれた店で、女はおよの

浅草

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近江屋は浅草御門外の福井町にあり、奥座敷の模様替えをするため、去年の冬

あいだ、お松に暇が出たので、さそい合わせて浅草寺へ参詣にゆき、その帰りに駒形の鰻屋で飯を喰べた。鰻

品川

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をしないけれども、親子には違いないのだから、品川のほうへ引取らせたらどうか、と藤吉が云った。ところが、それ

とかならないものかというのである。猪之は品川の漁師の三男で、実家にはまだ父親がいるし、兄が一人と

神田川

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神田川に沿って、聖坂のほうへ歩きながら、去定は前を見た

脇を裏へまわっていった。裏にはもうひとかわ、神田川に面した家が並んでおり、こっちの家とのあいだに、幅九

そこは佐久間町四丁目で、うしろが神田川になっている。家は二戸建てだが、格子戸のある小ぢんまりした