次郎物語 01 第一部 / 下村湖人

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ワシントン

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た。すると、あまりいい気持はしなかった。しかし、ワシントン以上の偉い行いをしてみようという野心も、何となく捨てかねた。

ね。何という煮え切らない子なんだろう。……ワシントンはね、……」

「それは、私、ワシントンの話を持ち出しましたの。」

東京

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任せて来たのだった。ところが、その男の子は、東京に遊学中病気になり、若くて死んでしまったので、謙蔵が、

休みになったら、すぐ東京見物に行くよ。次郎ちゃんは東京に行ったことある?」

「僕、休みになったら、すぐ東京見物に行くよ。次郎ちゃんは東京に行ったことある?」

「いいなあ。東京に親類があるんかい。」

「だけど、またすぐ東京に行くんだろう。東京にお嫁入りするんだから。」

「だけど、またすぐ東京に行くんだろう。東京にお嫁入りするんだから。」

出来る。しかし、竜一の言うのが本当なら、彼女は遠い東京に去るのである。もう一度帰って来るにしても、結局は永久

にか再び「姉」の顔が浮かび出した。そしてまた東京の方に消えた。彼の頭の中には、何度も何度もそれ

遠くに運ばれて行くのを見た。地図で想像する東京の近くまで来ると「姉」の顔も、列車も、一つの点

「姉ちゃんは、東京に行くの?」

「馬鹿にしてらあ。東京に行くの大喜びのくせに。……お菓子くれなきゃ、くれないでいいや

春子は微笑しながら言った。しかし東京行きのことは、みんなの調剤が終るまで一言も言わなかった。そして次郎

「いつ東京にたつの?」

から這いあがって来て、こっそり耳うちした。それは春子が東京に去ってから数日後のことであった。

東京に行っている竜一から、ある日絵はがきが来た。それには、春子

は一日も早く竜一に会ってみたかった。会って東京の様子もきき、また春子がいよいよ本式に上京するのはいつ頃になるの

地方をまわって学校教育に没頭し、五十近くになってから東京にまい戻って、尓来十年間、社会教育方面の仕事のために、南船