夕張の宿 / 小山清
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思われた。母親は震災のときに死んだ。家は吉原遊廓のはずれの俗に水道尻という処にあって、母親はある貸座敷の新造を
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北海道の夕張炭坑に、弥生寮という炭坑夫の合宿がある。ある日、寮生
二つに割れている。一年前、東京を立って北海道へ来る日に、順吉はいったん指定の集合場所へ行ったが、汽車の発車
「北海道は寒くていやでしょ。」
行って、炭坑夫の募集に応じた。一生のうちに北海道へ来るようなことがあろうとは夢にも思っていなかったが、そう
さんも口がうまいな。そんな人がいれば、なにも北海道までくるもんか。」
のいる家、順吉がゆっくり手足を伸すことの出来る家。北海道行はそれまで東京の外へ出たことのなかった順吉にとっては初めて
くる燈火を寒さに震えながら眺めたときにも、また北海道に渡ってから、寂しい海岸べりを長時間も、そういう寂寥の中に母親と
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「ええ。まだいちども。札幌や函館さえ数えるほどしか行ったことはないんですの。」
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とっては初めてする遠い旅であったが、途中汽車が青森の郊外に入って、雪の降る中に次第に数を増してくる燈火
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が、それほどの齢でもなかった。やはり東京者で深川に妻子を残してきたという。木場にいたこともあるとか
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ている。寮生は殆んどが内地から来た者である。東京者もいくたりかいる。順吉もその一人である。齢は三十五だが
お守りだが、二つに割れている。一年前、東京を立って北海道へ来る日に、順吉はいったん指定の集合場所へ行った
「順さんはいずれまた東京へ帰るんでしょ。」
「それでも東京には誰方か待っている人がいるんじゃないんですか。順
がゆっくり手足を伸すことの出来る家。北海道行はそれまで東京の外へ出たことのなかった順吉にとっては初めてする遠い旅で
て見えたが、それほどの齢でもなかった。やはり東京者で深川に妻子を残してきたという。木場にいたことも
は、親爺さんはひどく恐縮した。おすぎに頼んで早速東京の妻子の許に送金した。
に丁寧であった。同じ東京生れなので、昔の東京の思い出話をはじめると、順吉との間には話が尽きなかった。
きくときは人が変ったように丁寧であった。同じ東京生れなので、昔の東京の思い出話をはじめると、順吉との間
ね。気ばかりで躯がいうことをききません。そろそろ東京へ帰ろうかと思っているんです。」
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行ったが、汽車の発車時間まで暇があったので浅草の観音さまにお参りした。そのときこのお守りを買った。こないだふと取り出し