本州 横浜 北海道 軽井沢 金木 青森 甲府 下谷 千葉 三鷹 吉祥寺 新橋 銀座

「いや、女房子供は当分本州の北端に閉じ籠めて置くつもりだ。やもめ暮しの味もいいものだね。僕は

でやっていると、そこへぶらりと大物が現われた。横浜から田中英光が一升壜持参でやって来たんだ。」

のである。三鷹空襲の夜が明けて、田中さんが横浜へ帰った後、そろそろ時限爆弾がそこ、ここで破裂し出した中を二人

ものです。その後太宰さんが上京なさって、入れかわりに私は北海道に渡りました。その際私は書いたものはみんな太宰さんにお預けし

「僕は昔から軽井沢という土地は性に合わないんだ。僕はあの人の作品を読むと

これは終戦直後、太宰さんがまだ金木に疎開中で、私独りが三鷹のお家に留守番をしていた時に

くすぐられるような、じらされるような気持である。遠く金木に居られる太宰さんには済まないが、満更悪い気もしない。ああ、

「太宰さんはいま青森に居られますが。」

「青森の御住所はどちらでしょうか？」

衝動をさえ私に覚えさせたのである。太宰先生は青森と聞いて未練気もなく立ち去ってゆく女性の後姿を、憎々しい眼で見送る

ある。そのつど私は玄関に出て応対し、信書は青森へ向けて回送する。これは、いわば私の日課の如きものである。

「うん、女房子供は国へ、青森の兄のとこへやってあるんだ。やもめ暮しだ。」

「こちらから甲府へゆかれましてね、甲府で罹災して、それからお国へお帰りになったのです。」

「こちらから甲府へゆかれましてね、甲府で罹災して、それからお国へお

。軽蔑するかね。これは友人のなんだ。僕が甲府にいた間留守番をしてもらっていた友人のなんだ。ついその

の空襲だよ。その四、五日前に女房子供を甲府の女房の里に疎開させてね、ここには僕と小山とが

じゃないかと思われるふしがあるんだよ。僕が甲府にいた時遊びにきて葡萄酒を呑んだのだが、実にあわれ

てもらった。例の三月十日の空襲に私は下谷竜泉寺町に於て罹災し、その際この書幅と若干の拙作、それに

「千葉まで買出しに行くんだよ。」

「中野から千葉行の電車が出るので便利がいいんだ。まあ一日がかりだね

（例）三鷹綺譚

直後、太宰さんがまだ金木に疎開中で、私独りが三鷹のお家に留守番をしていた時に書いたものです。その後太宰さん

ことが出来たのである。題して「メフィスト」別名「三鷹綺譚」とでもいうべきものの顛末を以下ありのままに。

以上の如く私はいまこの三鷹の草屋に独り起臥しているのであるが、ここには毎日のよう

「ま、こっちへ、陽当りのいいとこへ。……三鷹は初めてかね？」

「やはり駅は三鷹で下りた？　吉祥寺の方からも来られるのだが。」

「ええ、三鷹で下りました。吉祥寺からも来られるんですか？」

それに奉公袋を風呂敷包みにして持って逃れた。三鷹の草屋に留守番するようになって、初めてこれを壁間に掲げたので

さんを負って奥さんが迎えに来られ、私も一緒に三鷹へ帰った。その折酔筆淋漓、障子紙に書いて下さったのが

込み、いざ花道へかかろうとすると、またもやボカン、ボカン。三鷹村のドン・キホーテはあわてて防空壕へ逆戻りさ。」

てゆく時の田中の言葉がまたいいんだ。『もう三鷹へは来ません。』流石の孫悟空もよほど荒肝を拉がれたらしい

子供さんは私が追い出したようなものなのである。三鷹空襲の夜が明けて、田中さんが横浜へ帰った後、そろそろ時限爆弾

わあ、罹災した、罹災した。」と絶叫して三鷹にまで馳け込み訴えをした。太宰さんは即座に「一緒に勉強しよう。

遠慮も要るものか。なにせ乃公には、武州は多摩郡三鷹村の太宰親分という日本一が伴いているんだから、世の中に恐いもの

「やはり駅は三鷹で下りた？　吉祥寺の方からも来られるのだが。」

「ええ、三鷹で下りました。吉祥寺からも来られるんですか？」

罹災してからここへ来ていたのだ。その夜吉祥寺の行きつけのスタンドから若干の酒を仕入れてきて、二人でやっている

のなくなってしまった人も大勢いるし、僕と小山は吉祥寺の亀井勝一郎君の許に一週間ほど御厄介になったのだ。」

入ったんだ。するとたまたまその日は柳橋だったか新橋だったかの芸妓の総見かなんかがあってね、極彩色な彼女達

評判になったものだ。昔の話だ。一日僕は銀座を散歩した帰りにぶらりと歌舞伎座に入ったんだ。するとたまたまその