遠野 花巻町 東京

しまうのを見送って、二階にあがって来た。けさ遠野から馬車に乗った人たちが、二組三組に分かれてほうぼうの室の

けさは九時に馬車が遠野を出た。同行の佐々木君は馬車に乗ると、かならずからだを悪くすると

に少し遠い花巻まで歩くこととした。その佐々木君も遠野の町はずれで別れて、五里半あると言う道を揺られながら、ここに着い

ので、その馬車に逢う所まで行こうと言うので、遠野の馬車を出したのだ。その上、今日は客が非常に多いから、

な。」と声をかけた。花巻の方の馭者は遠野に行く時に乗った覚えのある男だ。

「遠野まで行きました。」と私は答えた。

ここは遠野町と、花巻町との中継ぎの村で宮守というところ。両方から出る馬車が、この村まで

いる。寒さが沁みわたる。もう三月の二十九日。東京ならば桜も咲こうという頃なのだ。