ふるさとびと / 堀辰雄
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いそがしい夏場だけ、高崎の在から飯炊きの婆さんがよく働きに來てゐた。目が惡いの
さうしてこのかたはな若者がこの村のものでなく、高崎の在から雇はれて來てゐることに漸つと氣がついた。
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の八ヶ岳の裾までひろがつてゐる佐久の平を見下ろしながら中山道となつて低くなつてゆく。そこのあたりが、この村を印象ぶかいものに
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もう一つは、遠くの八ヶ岳の裾までひろがつてゐる佐久の平を見下ろしながら中山道となつて低くなつてゆく。そこのあたりが、この
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枝を漸くふところから離せるやうになつた頃、ホテルでは草津の有名な温泉旅館からそこの評判娘を娵にしたといふ噂を耳
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なりそのまま林のなかへ、もう一つは、遠くの八ヶ岳の裾までひろがつてゐる佐久の平を見下ろしながら中山道となつて低くなつて
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弟の五郎は、それを機會に、東京に出た。
その春ごろ、東京から歸つてきた弟の五郎は、やつと村に落ちつくやうになつ
秋になつてからだつた。ときどきおえふの許に東京から手紙が屆いた。おえふはよく何處かの物陰へいつて、
ゐて、二年ほど前からすこし體をこはして東京に歸つてゐたおしげといふ女を家内にした。おしげが小諸に
、かうやつてなりふり構はずに働いてゐる方が、この東京の女にはかへつて何んの氣苦勞もなくていいらしかつた
はづれの分去れのあたりの山々の眺めなどをなつかしんで、東京などからわざわざ訪れてくる人が多くなり出した。
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家業に身を入れず、夏には學生たちを誘つて小諸へ酒をのみにいつたり、冬は冬で、獵に夢中になり、
つてゐたおしげといふ女を家内にした。おしげが小諸にゐた頃からの約束であつたのを老人には隱してゐ
そんななかで、五郎は、もと小諸で藝者に出てゐて、二年ほど前からすこし體をこはし