江戸 湯河原 道灌山 紀尾井町 東京

antipathy の一つの原因である。これは幕府末造の江戸の町に生れて育つた、紀尾井町のお母樣の系統を承けてゐるの

。いつかもかう云つて、ふいと出て、一人で湯河原の宿に往つて泊り込んでゐたのを、どこへ徃つたか分らぬと

辨當を拵へさせて、母君を連れて、道灌山へ徃つて、茶店の腰掛で辨當を開いて、自分は持つて來た

のやうに、勝手な處へ徃つては行けないが、紀尾井町のお母樣の徃つて入らつしやる逗子へなら往つても好い。」

徃つて入らつしやる逗子へなら往つても好い。」紀尾井町といふのは、奧さんの父君、非職勅任判事阪直人氏の宅の

、わたしだつて妻のやうでないと云ふもんですか。紀尾井町のお母樣なんぞは、兄さんの月給なんぞにお構なすつたことはありやあ

「そりやあ違ふ。紀尾井町のお父さんは財産家で、お前の兄さんが會社で取る月給は、兄さん夫婦の小づか

遺言の事だつて、公證人の役場の小使が、紀尾井町へ來る婆あやあの亭主なので、それでやつとわたしに知れたのだ

これは幕府末造の江戸の町に生れて育つた、紀尾井町のお母樣の系統を承けてゐるのである。金毘羅樣を信向する

さんはお孃さん時代に、紫紺の羽織を着て、紀尾井町の邸から、溜池を通つて、虎の門へ參詣するのであつた。目

とするのが、嫉妬だといふことは、不思議にも紀尾井町のお父樣が最初に判斷した。娵に來た當座に、どうも

。只ゞお仕舞をして、車に乘つて、紀尾井町と其先生、其師匠のゐる町との間を、毎日徃復するといふの

のだ」と云つたことがある。奧さんはそれを紀尾井町のお父さんに話すと、「けしからん事を言ふ男だ、人を精神病者だと

世話で、月給十五圓の腰辨當を拜命して、東京に住むやうになつた時から、食ふ筈の肴を食はず、着る筈