二人の友 / 森鴎外
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聞いて来た。それは坊さんはF君の使に四国へ往ったので、九州へはその序に帰るのだと云うことであっ
なったので、正式に結婚しようとした。それを四国の親元で承引しない。そこで親達を説き勧めにF君が安国寺さんを
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女学生はF君の妻になることが出来た。二人は小石川に家を持った。
F君は相変らず小石川に住んで、第一高等学校に勤めていた。君と私との忙しい生活は
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坊さんはF君の使に四国へ往ったので、九州へはその序に帰るのだと云うことであった。使に往った先
越して私が凱旋した時には、安国寺さんはもう九州に帰っていた。小倉に近い山の中の寺で、住職をすること
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下宿した。素と私の家の向いは崖で、根津へ続く低地に接しているので、その崖の上には世に謂う猫
に謂う猫の額程の平地しか無かった。そこに、根津が遊郭であった時代に、八幡楼の隠居のいる小さい寮があった。
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た。その私が小倉へ来た。そこで君はわざわざ東京から私の跡を追って来た。これから小倉にいて、私に
正確にドイツ文を訳すると云うことを発見した。しかし東京にいた時の私の生活はいかにも繁劇らしいので、接近しようと
の人である。早くからドイツ語を専修しようと思い立って、東京へ出た。所々の学校に籍を置き、種々の教師に贄を執っ
しかし私の事は姑く措くとして、君は果して東京で師事すべき人を求めることの出来ぬ程、ドイツ語に通じているか
F君は黙ってはいられなくなった。「金は東京から来る汽車賃に皆使ってしまったのです。国から取れば、多少
その又次の年の三月に、私は役が変って東京へ帰った。丁度四年目に小倉の土地を離れたのである。
私は無妻で小倉へ往って、妻を連れて東京へ帰った。しかし私に附いて来た人は妻ばかりではなくて
寺を人に譲って、飄然と小倉を去った。そして東京で私の住まう団子坂上の家の向いに来て下宿した。素と
いると、丁度そこへF君が来て下宿した。東京で暮そうと思って、山口の地位を棄てて来たと云うことであっ
しかし東京に帰った私の生活は、小倉にいた時とは違って忙しい。
私が東京に帰ってから、桜が咲き桜が散って、気候は暖いと云う間
一年余立って、私が東京へ帰ってからの二度目の夏になった。或る日安国寺さんが来
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が起ったので、戦地へ出発した。F君は新橋の停車場まで送って来て、私にドイツ文で書いたロシア語の文法書
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、互に訪問することを許さぬので、私は時々巣鴨三田線の電車の中で、君と語を交えるに過ぎなかった。