松永町 牛込 江戸 八丁堀 下谷 長崎 亀戸

と思うまもなく、ふたつの影は、そこの松永町の横通りをはいった福仙寺の境内へ、ひらひらと吸われるように駆けこみ

ないそうじゃ。お早く駕籠の用意をさっしゃい。行くさきは松永町の正福寺」

日もまえからたびたびそういってきているんですよ。牛込の守屋先生、下谷の高島先生、いの字を習ったか、ろの字

二月の末でした。あさごとにぬくみがまして江戸も二月の声をきくと、もう春が近い。

春近い江戸の宵は、もう風までがぬくやかでした。まちわびているところへ、

まえの医者となって、つい十日ほどまえにこっそりまた江戸に帰ってまいったのでござります。帰ってきて、それとなく千萩

うわさに聞けば長崎で医者の修業を終えて、こっそりと江戸へ帰った由、さぞやせがれも千萩と添いたかろう、跡目をつぎたかろうと

「八丁堀の右門じゃ。御用の筋がある。早くあけろ」

、声をはさむすきさえないのです。さっさと風のように八丁堀へ帰っていくと、ぶつぶつと口の中で何かいっている伝六をしりめ

そういってきているんですよ。牛込の守屋先生、下谷の高島先生、いの字を習ったか、ろの字を習ったか

なせえ。だから、いわねえこっちゃねえんだ。牛込か下谷か、どっちかの先生が待ちかねて、お迎えの駕籠をよこしたんです

親なら、かってにしろとばかり、家を飛び出し、こっそりと長崎へくだって、きょうが日までの丸四年、死に身になって医業を

は腹を痛めた実のせがれ、人のうわさに聞けば長崎で医者の修業を終えて、こっそりと江戸へ帰った由、さぞやせがれ

梅見は梅見、天神祭りは二十五日の菅公祭、湯島、亀戸、天神と名のつくほどのところはむろんのことだが、お社で