旗本退屈男 07 第七話 仙台に現れた退屈男 / 佐々木味津三
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広言吐きながらのっしのっしと現れたのは、鎮西の八郎が再来ではないかと思われる、六尺豊かの大兵漢です。
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「ははん、そのことか。江戸ではな」
「江戸が何だと申すのじゃ」
「弓は射るもの当てるもの、江戸で引いても当らぬものは富籤位じゃ。第一――」
「隠密じゃッ。隠密じゃッ。やはり江戸隠密に相違あるまい。素直に名乗れッ」
それとも参らばこの傷じゃ。幸いの夕啼き時刻、江戸で鳴らしたこの三日月傷が鼠呼きして飛んで参るぞッ」
とお宿を願うたよし申してでござります。ほかならぬ江戸で御評判の御殿様、同じ江戸者のよしみに御助け下さらばしあわせにござり
――者共ッ、一歩たりともそこ動かば、江戸で少しは人に知られた早矢の英膳が仕止め矢、ひとり残らずうぬ
。ありがとうござります。実は、実は手前、御前と同じ江戸の……」
もござりますまいが、手前等英膳と二人には、江戸におりました頃からお馴染深いお殿様でござりますゆえ、この城下にお
のでござります。それもこれも藩の者共が、江戸に城内の秘密嗅ぎ知られてはとの懸念から、宿改め、武家改めをやり
「まだ分らぬか。わからば元より、江戸大公儀御差遣の隠密に傷一つ負わしなば、伊達五十四郡の存亡に
郡の存亡にかかろうぞ。匆々に捕り方退かせて、江戸へ申し開きの謝罪状でも書きしたためるが家名のためじゃ。退けい。退かせい
致そうぞ。さすれば五十四郡も安泰じゃ。早う帰って江戸への謝罪の急使、追い仕立てるよう手配でもさっしゃい。――若者、旅姿
。まてまて。妻女がそこに泣いてじゃ。いたわって江戸まで一緒に道中するよう、早う支度させい」
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仙台に現れた退屈男
(例)仙台
(例)仙台伊達
五十四郡をわが庭に、今ぞ栄華威勢を世に誇る仙台伊達の青葉城下です。出船入り船帆影も繁き石の巻からそのお城下まで
三十五反の帆を張りあげて行く仙台石の巻とは、必ずしも唄空事の誇張ではない。ここはその
下郎、とやりました。海越え山越え坂越えて、奥州仙台陸奥のズウズウ国までやって来ても、自ずと言うことが大きいから敵わない
泊めなば何が面倒なのじゃ。それが昔から当仙台伊達家の家風じゃと申すか」
ッと胆を練るようにとな。いずれにしても、仙台伊達と言えば加賀島津につづく大藩じゃ。ましてや独眼竜将軍の流れを
笑ったのに何の不思議があろうかい。それとも仙台の方々は一生お笑い召さらぬかな」
雑言さるるのじゃッ。怪しからぬことほざき召さると、仙台武士の名にかけても許しませぬぞッ」
「ウフフフ。その仙台武士がおかしいのよ。ナマリ節じゃかズウズウ武士じゃか存ぜぬが、まこと
土壇のあたり、皎々としてまばゆく照り栄え、矢場のここかしこ仙台藩士の色めき立って、打ち睨むその目、にぎりしめる柄頭、一抹の殺気
下知と共に笑止や仙台藩士、わが退屈旗本早乙女主水之介を飽くまでも隠密と疑い信じて、今ぞ
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。座スクはツグの間付きの離れ造り、お米は秋田荘内の飛び切り上等、御菜も二ノ膳つきでござります。それで