宇都宮藩 根津権現 江戸城 築地塀 宇都宮 大久保

「へえ。元あ、宇都宮藩のお歴々だったとか言いましたが、表向きゃ、手習いの看板出して

「根津権現の丁度真裏でごぜえますがね」

おいた野良犬が、とうとう二万頭の多数に及び、到底最早江戸城内の犬小屋だけでは、おびただしいそれらのお犬様を取締ることが出来なく

ぱッと土を蹴って、片手支えに、五尺の築地塀上におどり上がりながら、ふと、足元の門奥に目をおとしたとき！

第二には宇都宮藩士で、八条流の黒住団七。

「へえ。元あ、宇都宮藩のお歴々だったとか言いましたが、表向きゃ、手習いの看板

の嘘偽りがござりましょうぞ。あの黒住の旦那様が、昔宇都宮藩で御同役だったとかいう市毛の旦那様と二人して、ゆうべ

のみを引き随えて、ただちに黒住団七の禄を喰む、宇都宮九万石の主、奥平美作守昌章の上屋敷に行き向いました。またこれ

を取締ることが出来なくなりましたので、西郊中野と大久保に、それぞれ十万坪ずつの広大なお犬小屋をしつらえ、これに一万頭