旗本退屈男 11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男 / 佐々木味津三

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地名一覧

大江戸

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大江戸は、目路の限り、黒い布をひろげたような濃い闇です。

湯島

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は、腰本治右衛門とかおっしゃるお歴々、売られたお方は湯島とやらの町絵師とかききました。ところがいぶかしいことにはその絵師の

こっちへは何の挑戦がなくとも湯島の方へ何か仕掛けたら、梅甫から急の使いでも来そうなの

番町

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番町の治右衛門邸へ乗りつけたのが、かれこれもう初更近い刻限でした。

もやらず兄の帰りを待ったが、しかし主水之介は、番町の腰本治右屋敷へ乗り込んでいったきり、待てど暮せど一向に帰る気色

「飛んだことになりましたな……。さき程番町の屋敷へ訪れたときの容子、案内していきましたときの容子、お

明石

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が、妻女の小芳というのがつい近頃まで吉原で明石と名乗った遊女あがりで、ちょっと別嬪、これが町内での評判でした。

奥州

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しかも只の女ではない。持ち役そのままの傾城姿、奥州に早変りしたのです。いや、その声は言うもさらなり、言葉までが

じゃわい。主水之介、苦労がしとうなった。どうじゃ、奥州、いっそ成田屋を撒いてどこぞでしっぽり濡れてみるか」

渡り切ると、不意に簾垂れの中から、吉三郎の奥州が、もじもじしながら恥ずかしそうに呼びとめました。

の売り物じゃ。もそっと二枚目の返事をせんと、奥州に振られるぞ。さきほどのおししは、十万石位のおししだったのう

くねりと身をくねらせて吉三郎の奥州が、やさしく主水之介を睨めながら、チクリと膝のあたりをつねりました。――

江戸

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「でも、不思議でござんすな。江戸へ来るなら来るとお便り位さきによこしておきそうなものなのに、

分るじゃねえかよ。それにしても梅甫さん、江戸ってところは、よくよく閑人の多いところだね」

「べらぼうめ、見損った真似しやがるねえ! 江戸でこそ下総十五郎じゃ睨みが利かねえかも知れねえが、九十九里ガ浜へ

「申しやがると申しおったのう。江戸に住まって、この眉間傷知らぬような奴は、もぐりじゃと申すのよ

「御前が、御笑談ばっかり……。江戸の親方さん、では、身支度に――」

、――ええ、ままよ、おれも下総十五郎だ、江戸で膾斬りになってみるのも、地獄へいってからの話の種だ

。――ゆらゆらゆれて行く駕籠の右と左りに、江戸の夏の灯の海が涯なくつづきました。

陽があがって間もないのに、江戸の六月は朝まだきから蒸し風呂のなかに這入ったような暑さです。

女の膝へまた主水之介が何と穏やかならぬことか、江戸にゆかりの眉間傷を軽くのせて、この世の極楽ここにありと言いたげに

愛妾の膝に枕したとあっては、いかに主水之介、江戸に名代の傷の御前であろうとも、事が只ですむ筈はないのです

ひと剃り、ふた剃りと、青月代に変るにつれて、江戸に名代の眉間傷も次第にくっきりと浮き上がりました。

の傷に名代を誇る主水之介の家門家格は、実に又江戸徳川名代を誇るそのお影組百騎の中の一騎なのでした。

両国

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竹囲いがあって、中は刺客の忍ぶには屈強な場所です。両国で仕損じたら、ここでという計画だったらしく、ちらりとまた二ツ、その竹

湯島天神

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ご明神様だが、あの裏手は、地つづきと言っていい湯島天神へかけて、あんまり賑やかなところではない。藤堂家の大きな屋敷があっ

水戸

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出て、そこから濠ばた沿いに右へ道をとり、水戸邸の手前からさらに左へ折れて、どうやら駕籠は伝通院を目ざして

深川

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はござりませぬ。日頃御贔屓に預りまするお礼方々、今宵深川へお供させて頂きとうござりまするが、いかがでござります」

「深川はどこじゃ。女子がおるか」

木挽町の楽屋を出た三挺の列ね駕籠は、ひたひたと深川を目ざしました。

なお方がひとりおいでなすってな、行った先は深川の谷の家だ、気付けをあげます、駕籠も雇うてあげます、すぐ

「そうよ。ほんの今深川まで血を浴びて身共を追っかけて来たゆえ、眉間傷の供養にやっ

「あ、兄が、十、十五郎が、深川なぞへ行かれる筈がござりませぬ。兄はほんの今しがた血を浴びて、

下総十五郎にふたりある筈はない。深川へ来た十五郎が嘘の十五郎か、こっちへ現れた十五郎が

神田

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(例)神田明神

神田明神の裏手、江戸ッ児が自慢のご明神様だが、あの裏手は

「十五郎、うれしくて声も出ませぬ。神田の明神裏の篠原梅甫というのが配れ合いでござんす。手前、

浅草

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出来あがった画を浅草へ持っていって、小急ぎに帰って来たのが六月初めの

永代橋

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さしかかったのが江戸名代の永代橋。

両国橋

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割下水からお城への道は、両国橋を渡って大伝馬町をのぼり、四丁め、三丁め、二丁めと本町

その両国橋へさしかかったとき、察しの通り、やはり刺客が伏せてあったのです。