旗本退屈男 09 第九話 江戸に帰った退屈男 / 佐々木味津三
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いうのも気になるが、竜造寺のお殿様もまたその大阪とは因縁の深けえお方でごぜえますから、それこれを思い合わせて考えまする
。事の起ったのはついこの年の春でした。大阪冬の陣と共に豊家はあの通り悲しい没落を遂げて、世に大阪城
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ところはなかったが、極度の天台宗信者で、京都叡山の延暦寺を以て海内第一の霊場と独り決めに決めている程、狂的に近い信仰を捧げて
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、宗対馬守なぞのお下屋敷でした。真ッすぐいって三ノ輪、金杉と飛ばして行けば、上野のお山下から日本橋へ出て江戸の真中
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ていたために、大阪城代に就任するや間もなく比叡山から、内密の献金四万両の調達方を頼みこまれて、ついふらふらと御秘蔵
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江戸に帰った退屈男
とうとう江戸へ帰りました。絲の切れた凧のような男のことであるから、
と里心がついたものか、知らぬうちにとうとうふわふわと江戸へ帰り着きました。
江戸は華の元禄、繁昌の真っ盛り。
木枯が江戸の名物とすれば、それにも劣らぬ江戸名物の退屈男が久方ぶりに帰っ
木枯が江戸の名物とすれば、それにも劣らぬ江戸名物の退屈男が久方ぶりに帰って来たのであるから、眉間の三日月傷
なのはたやすく出来そうにもないわが兄と共々、めでたく江戸へ帰ることの出来たのが限りなくも悦ばしかったと見えて、しきりにはしゃぎながら
ほら、ごろうじませ! ごろうじませ! 灯が見えまする。江戸の灯が見え出しました。さぞかしおなつかしゅうござりましょう?」
「江戸の灯でござります。久方ぶりでござりますもの、さぞかしおなつかしゅうござりましょう」
と飛ばして行けば、上野のお山下から日本橋へ出て江戸の真中への一本道です。寺の角から新堀伝いの左へ下ると、
――もうここまで来れば匂いが強い。右も左も江戸の匂いが強いのです。
「何の匂いでござんす? 火事や江戸の名物だ。ジャンと来た奴なら今に始まッたこッちゃござんせ
吉原の灯りの匂いを知るという奴じゃ。何はともあれ江戸へ帰ったとあらばな、ほかのところはともかく、曲輪五丁町だけへ
「兄はまたどこぞ旅に出とうなった。江戸は思うたよりも寂しい。いや、思うたよりも退屈なところよな」
あるか、ぞれとも知り合いの者ででもあるか、江戸好みにすっきりと垢ぬけのした町家有ちの若新造でした。
「お待ち申していた段じゃござんせぬ。江戸へ御帰りなれば何をおいても吉原へお越し遊ばすだろうと存じまして
力が借りたいとのう。ほほう、左様か。相変らず江戸はちと泰平すぎて、傷供養らしい傷供養もしみじみと出来そうもないゆえ、
んですよ。あッしゃいってえお殿様が黙ってこの江戸を売ったッてえことが気に入らねえんです。御免なせえましよ。
ア御殿様は、傷の御前で名を御売り遊ばした江戸の御名物でいらッしゃるんだ。その江戸名物のお殿様が、御自身は
売り遊ばした江戸の御名物でいらッしゃるんだ。その江戸名物のお殿様が、御自身はどういう御気持でのことか知らねえが、あッ
、でえ一よくねえんですよ。何を言っても江戸は日本一御繁昌の御膝元なんだからね。こちらに御在で遊ばしゃ遊ばした
な道場じゃ。いや、この塩梅ならばなかなかどうして、江戸もずんと面白そうじゃわい。では何じゃな、源七とやら申す棟梁は
ないこと、年に一度宛、分銅改めの密使すらもわざわざ江戸から送って、つねに城内第一の貴品の取扱いを命じておいたもの
当り前のことです。しかもあと十日とたたぬ間もなく江戸から御分銅改めの密使が到着することをちゃんと知っていながら、そのうちの
ものを、事々しゅう罪に処するとは何のことじゃ。早々江戸に帰って上申しませい」
――長割下水のあたり、しんしんと小夜ふけて、江戸の名物木枯もどうやら少し鎮まったらしい気勢でした。
なかった。片やは横紙破りの風雲児、片やはまた江戸名物の退屈男と、両々劣らぬ大立者同士のその応対が実にたまらなかった
快然として打ち笑いながら、夜ふけの江戸の木枯荒れる闇の中に消え去りました。
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夢路は京か三河か日光か。それとも五十四郡の仙台か。久方ぶりに帰って来た大江戸の灯も、そろそろ始まりかけた退屈ゆえ
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出払って、大橋を渡り切ってしまうと、小塚ッ原から新町、下谷通り新町とつづいて、左が浄願寺、右が石川日向、宗対馬
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批難すべきところはなかったが、極度の天台宗信者で、京都叡山の延暦寺を以て海内第一の霊場と独り決めに決めている程、
ゆえに命を奪られた者は数限りがないわ。京都叡山、天台の座首も御言いじゃ。護持院隆光こそは許し難き仏敵
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(例)千住
なくうれしくなる筈はないのです。――そのまま駕籠は千住掃部宿を出払って、大橋を渡り切ってしまうと、小塚ッ原から新町、下谷通り
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て三ノ輪、金杉と飛ばして行けば、上野のお山下から日本橋へ出て江戸の真中への一本道です。寺の角から新堀伝いの
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た。真ッすぐいって三ノ輪、金杉と飛ばして行けば、上野のお山下から日本橋へ出て江戸の真中への一本道です。寺の
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のようにあッしゃ少しばかり侠気の看板のやくざ者で、神田の小出河岸にちッちゃな塒を構え、御商人衆や御大家へ