右門捕物帖 33 死人ぶろ / 佐々木味津三
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「浅草の永徳寺でござります。あたしたちふたりとも、親なし子でござります。親なし子だから
とも、親なし子でござります。親なし子だから、永徳寺にもらわれて、六つのときから小僧になっていたのでござります
。一度はお牢屋に入れますがのう。おじさんがすぐ永徳寺へ知らせてあげますから、まもなくお師匠が救いとって、慈悲のお
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「小石川の伝通院の裏通りに、恵信寺ってえいう小さなお寺がありますね、あの
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佐久間町 駕籠留
いうふうに不審を見つけてぴしぴしたたみかけていくもんだよ。佐久間町といや隣の横町だ。宿駕籠にちがいない。行ってみな」
主従の足は飛ぶようでした。案の定、佐久間町の通りかどに、油障子で囲んだ安駕籠屋が見えるのです。
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朝ごとに江戸は深い霧でした……。
降りるようになると、秋が近い。秋が近づくと、江戸の町に景物が決まって二つふえる。角兵衛獅子に柳原お馬場の朝げいこ、
やった細工に相違ねえ。一年ぶりであいつらがまた江戸へ流れ込んだきのうきょうじゃねえかよ。あっちこっち流して歩くうちに、かどわかしたお
から冬にかけてのかせぎ場に、雪の国からこの江戸へ流れ出してきている角兵衛獅子は、年端の行かぬ子どもだけでもじつに六
めに会わされたのでござります。それゆえ、毎年毎年江戸へ来るたび、もしあの鬼女が見つかったら思い知らせてやろうと、ふたりで相談し
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が、そこのお寺もやっぱりいけない。川を渡って本所へいって三カ寺回ったが、そこもいけない、いけない、いけない
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そのまま駕籠にゆられて、すうと八丁堀へ引き揚げました。
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「さあ、どうでござんすかね。両国の河岸っぷちに見せ物小屋のなわ張り株を持っている松長ってえいう顔役が
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たが、そこもいけない、いけない、いけないで、神田へまた舞いもどってきたら、とうとう夜が明けちまったんですよ。こっちも
神田、米屋増屋弥五右衛門方へ後妻を世話せしはそのほうなる由、いかなる縁
目ざしたのは、柳原お馬場に近い神田の旅籠町です。
と自分はおひろいで、から駕籠をあとに従えながら、神田へ行きついたのが暮れ六ツ少しすぎでした。
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ほかの寺へやってくれろというんでね、今度は浅草へいったんでござんす。ところが、そこのお寺もやっぱりいけない
「浅草の永徳寺でござります。あたしたちふたりとも、親なし子でござります。親
「生きておりとうはございませんけれど、浅草のお師匠さまにおわび申しとうござります……」