鉛筆日抄 / 長塚節
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といふ噺をきく。湖水は以前は萱原であつたが磐梯山が破裂した時に土灰が一方を塞いだ爲め水は落ち行く瀬を失つ
たのは山の畑へ稼ぎに行つた老人である。磐梯山にあのやうな烟の立つ筈はない。山の凶事であるかも知れぬと
磐梯山も雨が晴れた。急峻な山腹を今一朶の雲が駈けのぼるやうにして
山を離れると磐梯の全形が明かである。湖畔から見る磐梯山は殆んど破裂の趾のみが表はれる。頂から地盤の底まで唯一刀の下
て居る四五本の芒の穗がゆるかに搖れて恐ろしい磐梯山の面を撫でるやうに見える。芒のもとには野菊のやうな花が眞白
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搖する。雨が大粒になつた。幻の如く見えた金華山は復た雲深く隱れて裾だけが短く表はれた。山の裾は
のだといふと此日の渡しは此れ限りなので金華山から鮎川へ酒買に渡つたものが戻るまで待つて居るのだといふの
からだん/\に禿げると三角に握つた握飯のやうな金華山が頭から押へつけるやうに聳えて居る。中腹の神社から下には鋏
社務所から出た一行十人ばかり白衣の先達に案内されて金華山を登る。坂が極めて峻しい。曉の霧がひや/\と梢を渡つ
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松島の村から東へ海について行く。此れは東名の濱へ出るには
たから一所になつて噺をしながら歩いた。男は松島のホテルへ鰻を賣つて歸りだとのことである。此所らの近道
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江の島列島が大小相並んで狹い瀬戸の間から見える。列島は彼の穗に隱れては復あらはれる。桐油を頭からかぶつて余と向き
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鮎川の港からだら/\と上つて勾配の急な坂をおりる。杉の木の間
ものが戻るまで待つて居るのだといふのである。鮎川に二人で酒を飮んでるのがあつたがあれなら迚ても今日の
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といふやうに聞えた。崕をおりて田甫へ出たら富山の寺がすぐ頭の上にあつた。
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もけろつとして立つて居る。其斑紋の美しいことは奈良の鹿などの到底及ばぬ所である。顧れば一行の乘つて來た