開業医 / 長塚節

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地名一覧

川越

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其親戚で八王子に開業して居た醫者で近頃郷里の川越在へ戻つて居るのがある。隨分資産もあるしそれに一人子の娘が

からとはいひながら滑稽至極なことであつた。途中は川越まで汽車であつたから實は草鞋の底も汚れないので少し極りが惡い

さうなると慥な諾否はいへなくなる。何故それでは川越あたりまで行つたかといふと斯の如き待遇を受けようとは思はず一つに

本郷

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急いで上京した。女の許へは手紙を出して本郷の西片町に居た鹿沼の病院の養子だといふ醫者の處で落合ふやう

富士登山

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して見ようといふことに運んだ。暑中休暇を利用して富士登山といふ扮裝で行つた。先方が何も知らぬうちならば探偵の積りも

赤坂

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だ。それが驚いたことに二年經つて志願兵で赤坂の聯隊に居る處へ其醫者の弟だといふのが突然尋ねて來た

千葉

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醫者が出征の際に撮つた中隊の寫眞で一つは千葉の醫學校の卒業證書である。炬燵の側のランプの光が一方

である。借財を背負つた身體を兄に曳かれて千葉を出たといふ姿で父兄への信用は其時失墜してしまつた

千葉も最初は愉快であつた。學校の庭から遠く海を隔てた相州あたり

に成つたから惡しからず思つてくれ、僕は凡そ何日頃千葉へ立つ、それにしても僕の立つた後へ手紙が來ると非常

といふ程のことではないが、其起りといへば千葉に居た時のことであつた。自分の不成績を少しく恥ぢて一奮發

期間を過せば獨逸へ留學したい心算であるし、千葉での不勉強をどうにか償ひたいと思ふのだから五六年は暇どれる

宇都宮

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募つた。憐れな看護婦は到頭そのために解雇されて宇都宮を去らねばならなくなつた。其時姉と散々別れを惜んだ。

『病院へ奉職したのは二月である。宇都宮は日光颪が吹きつゝあつたけれど滿洲の冬を凌いで來た爲め

の留まつて居れといふ言は彼は心の中で宇都宮へついた時から待つて居たであつたらう。姉の處に居た

時には暫く胸がせか/\して居た。宇都宮へついて出口の方へ急いで行かうとすると僕は驚いた。

。それは暫くのことでお目に掛つてそれから宇都宮へ行くといふ文意で明日が丁度其日に當つて居た。僕は

翌朝僕は急に宇都宮へ立つた。疑懼と不安との念に驅られつゝ病院へもどつた

成らうと思つて別れはしなかつたのである。宇都宮へ歸る時に山田が姙娠した事情を逐一田端に居た兄に思ひ切つ

したらしく二階へ向いて女の名を喚んだ。宇都宮からお出でに成つたよといつた時梯子段から女の裾がちらりと

八王子

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君も知つてるだらうあの館野である。其親戚で八王子に開業して居た醫者で近頃郷里の川越在へ戻つて居るのが

東京

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を得るだけの契約があつたのである。それで今東京に出て大學の助手をして居る其の養子に手紙を出したので

から全く兄に從つて女を再び訪ねなかつた。然し東京は詰らなかつたから急に用を達して歸つてしまつた。歸り

公園をぶらついて其晩は淺草へ泊つてしまつた。東京には四日許り居た。田端に居た兄の家へは行かず

上野

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から急に押へつけて來たやうに感じた。到頭上野まで來てしまつた。停車場の横丁で思ひ切つて宿屋の閾を跨え

つた。二人は手を携へて出た。さうして上野から淺草の公園をぶらついて其晩は淺草へ泊つてしまつた。東京

恥かしい程みすぼらしい抔といつてよこしたことがある。汽車が上野へつくとすぐに其家を尋ねて行つた。猿樂町の狹い

があつたので急に出席することに成つた。上野の花よりも何よりも上京して見ると氣掛りな山田に逢たく

田端

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「あの先生は田端に御親戚がございますさうですが」

「昨晩は田端へお泊りなのでございませうね」

ではあり其他心にはいろ/\のことも思つて田端へついた。先づ兄から其後の女の容子を聞いてからにし

ある。宇都宮へ歸る時に山田が姙娠した事情を逐一田端に居た兄に思ひ切つて明かしてしまつた。自身に度々上京して

泊つてしまつた。東京には四日許り居た。田端に居た兄の家へは行かずに女を連れて散歩しては

「田端に居るんだな」

「うんもう田端へ行つて二ヶ月に成るだらう、身輕になればあとは私自身で

神田

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たのだ。後に松田に聞いて見ると其時女は神田に居た松田を尋ねて行つたさうだ。さうして散々泣いたさう