西三河 金山 佐渡 大崎

そこで土地の名を聞いたら亭主が皺嗄れた聲で西三河といふ所だといつた。ふと檐端を見ると板看板に五色軍談營業と

に何處で採つた花かと聞くので余は途中の西三河の海岸でとつたのだといふと「美しいものでございますノ、花といふもの

を金銀の水が絶えず流れて居るのかと思ふと金山が急に美化されてしまつたやうに感ぜられた。佐渡は此の如く

佐渡が島

佐渡は今日で三日共雨である。小木の港への街道は眞野の入江

此の如きものが一杯に立てられてあるものと見える。佐渡は到る所が物寂びて居るが此の漁村はまた格別である。秋といつても

見ると明るい空は青く澄んで一片の雲翳もない。佐渡は漸く晴れたのである。三階の下からは瓦屋根がつゞいて其先

て簑を頭からかぶつて參つたことがございます。佐渡には道中簑と申すのがございましてノ、大きな荷物の上から掛けまし

れて行く。本堂の庭から石段をおりる。途々聞くと佐渡には二派の能の先生があつた。此の博勞の平内さんも若い

たのも皆此の優しい心の發動でなければならぬ。佐渡といふと昔は罪人の集合所であつたやうに思つて居たので

がむつくり起きて突然にどうだといふと舵とりの男は佐渡あらしならいゝが南だからどうも駄目だ。出雲崎へ向けて見ても煽ら

佐渡を見ると悠然として海を掩うて長く横はつて居る。大きな馬盥

浮べれば鍋葢のとつ手を横から見たのが佐渡が島である。鍋の底から燃えあがつた焔のやうな夕燒の

底から燃えあがつた焔のやうな夕燒の空が佐渡を包んで平穩な海一杯にきらめいて居る。佐渡は余がためには

が佐渡を包んで平穩な海一杯にきらめいて居る。佐渡は余がためには到底忘れられぬ愉快な境であつた。三日は

が急に美化されてしまつたやうに感ぜられた。佐渡は此の如くにして到る所余がために裝飾されて居るかとも

に裝飾されて居るかとも思はれる。外見は凡そ佐渡ほど寂びた所は少なからう。然しながら仔細に味はうて見ると余はまだ佐渡

は少なからう。然しながら仔細に味はうて見ると余はまだ佐渡ほど美しい分子を有して居る所に逢うたことがない。佐渡は博勞だけ

ほど美しい分子を有して居る所に逢うたことがない。佐渡は博勞だけでも十分であるが只博勞だけでは鼠地の切れの

勞だけでは鼠地の切れのやうな感じを免れぬ。佐渡が島では小木の港で美人に逢うた。美人は鼠地へ金糸銀糸で

た。水夫の濯いでくれた草鞋はすつかり乾いて居る。佐渡の形見として余の手に殘つたものは小木の宿屋の美人がともし

ので余は赤泊の濱まで行く積であるが途中に大崎といふ所がある筈だから其所で博勞の家をたづねようと思ふ

たら老人はにこ／＼笑ひながら此から少し先へ行けば大崎になる。牛でも買に來たか、まだ二十にはなるまい、能う

瀧だといつた。老人は耳が遠いのである。大崎の博勞の家はまだ遠いのかと大きな聲でいつたら老人はにこ

合掌して其瀧を拜んで居る。余は此老人に大崎はまだ遠いかと聞いたらウン此かこれは御來迎の瀧だといつ