鬼怒沼山 九州 高知 岡山 福岡 東京 市ヶ谷

の器械を肩にして鬼怒川の上流に溯つた。鬼怒沼山を攀ぢて雜草の中に淺く湛へた鬼怒沼を探檢した。周圍

に愧ぢない積である。佐治君は在職一年で九州へ去つてしまつた。其短い一年間自分は一緒に生徒の監督をし

に臨みました。其時知人から此の程設立になつた九州の商業學校に教鞭を執ることを勸誘されました。俸給の増額が心

であることを知らないものではありません。それで九州に去ることは一たび私の良心を苦めました。然し私の行爲は罪

慰めるに大なる便宜を有します。かうして私は斷然九州に去ることを決しました。然しながら教育者として僅に一年で辭

に妻を厭ふの念が湧起しました。私は九州に去ることに依つて愁眉を開きうる筈でなければなりません。然しながら

「私は高知の、士族といつても極めて小身な貧しい家に成長しました。私

ために俸給から十二圓を割いて送りました。妻は高知へ去る時決して泣きませんでした。妻の鋭くなつた眼光は却て

へ赴任することに成りました。赴任と共に妻は高知へ歸らせました。妻子と同棲することには父の頑強な反對が

。私はこれから孤獨の境涯に移つたのです。岡山に居るうち養父は益※自暴自棄に陷りました。店は全く人の

然し遂にその人が有りました。私は妻子に別れて岡山へ赴きました。單純な寄宿舍の生活は始まりました。私は

故に貞淑な妻を捨てることは出來ません。私が岡山に往つた頃知名の牧師が來られたことがあります。私は其

「私はすぐに福岡へ移ります。私の去つた後聞いてくれる人がありましたらどうか

があるといふ心の慰藉があつたからであります。東京からは歸省するといふことは私には出來なかつたのです。私の

は固より解らない。又解らうともしなかつた。彼は市ヶ谷とか牛込とかの見附を始終往復したといつた。あの見附の