水戸 東京

て歩くもの大抵は町の方へと急ぐ。彼は今水戸から來たので此處から或町へ行く目的である。預て定期

の前垂の下へ差し込んで凝然として居る。彼は水戸の或通りへ近く洋物店を開く計畫を成就した。其傍酒と

感ずるのである。彼はかうした責任の重い身を水戸から汽車に搖られて來た。さうして野中の道を又馬車に

「私ですか、私は水戸ですよ」

餘所にして襟卷に顎を埋めて居た彼も水戸と聞いて少し首を擡げた。さうして遂賑かさにひかされて

泣きついて幾らかの資本を貢いでもらつて小さながらも水戸で穀屋の店を開いて居る。教員といふのは猫のやうな男

になつた。それから到頭一緒に遁げて教員の出た水戸の地へ落ちついたのである。父の家業が穀屋であるので此度

を失つたといつて嘆息した。そんな風で後に東京へ飛び出して勝手に電話の交換局かなどへはひつて遂に有勝な男との