菜の花 / 長塚節
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見詰めて居た。下女が慌しく階子段を昇つて來た。西陣の河井さんから電話で只今伺ひますからといつて來たといつた。此の下女
。さうして角屋というて尋ねて行けといつた。西陣を出たのは午頃であつた。二條の城の附近をめぐつて、
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と蝙蝠傘とを春さんが出してくれる。河井さんが一言島原といつた。車夫はへえと首肯いて梶棒をあげる。車が軋り出した時
めぐつて、場末の汚い溝のほとりを過ぎたりして島原までは長い道程であつた。大門の前にはもう乘り捨てた人力車がご
はすぐに田甫である。田甫へ出て外から見ると島原は只時代を帶びた地味な一廓であるに過ぎぬ。菜の花が田甫に近く
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心持もした。外は闇夜である。車は威勢よく東本願寺の前へ出て、廣い通を停車場の方へと走るやうであつた。
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奈良や吉野とめぐつてもどつて見ると、僅か五六日の内に京は目切と淋しく
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歸りかける。余はおゑんさんを尋ねて再び逢つた。壬生寺へ行く道を聞いた。おゑんさんはまだ狂言は見られるだらうと、
先には菜の花の上に甍が聳えて見える。それが壬生寺であらうと思ひつゝ余は急いだ。余は歩きながら太夫のことを心に
且つ其先代の小太夫といふのを想像して見た。壬生寺であらうと思ふ甍がだん/\大きく見えて來た。余はふと切な相
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といふ名を知つたのは此の時である。奈良から戻つて見ると余の部屋には何處かの商人がはひつて居
聞いて居る。十八位な可憐の少女である。余が奈良の地方へ行く前に居たのは下の部屋で、そこは有繋
日の内に京は目切と淋しく成つて居た。奈良は晴天が持續した。それで此の地方に特有な白く乾燥した
奈良や吉野とめぐつてもどつて見ると、僅か五六日の内に京は