少年の死 / 木下杢太郎
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付く筈であつた。といふのはその時刻こそは、東京からの汽車がこの町の停車場に着く時であつたからである。即ち
である。然しそれはまた學校の小使部屋であつて、東京の中學校の片盲の小使が居た。卓の上には堆く積ん
富之助の姉のおつなは今年の三月迄東京の學校に居た。そして鹿田は蔭ながらおつなの事を善く知つ
父が言つた。「今日はお前の友達が東京から來るさうだが、試驗の事も分るだらう。」
「土屋……土屋富之助といふ、東京の中學へ行つてゐる學生の家ですが……何でも停車場からさう
ひに上りました。」とその女中が言つた。「東京のお客さんがお着きになつて、皆貴方が何處へ行つたかつて心配し
が、是が一番行かない事だらうと思ふ。わしが東京へ出て監督してやれば可いのだが、さう云ふわけにも行か
も東京へ出てから去年も今年も思はしくない。尤も東京は諸國から秀才が集るのだて。鳥なき里の蝙蝠位では役
は伜も大分成績が良かつたやうだが、どうも東京へ出てから去年も今年も思はしくない。尤も東京は諸國から秀才が
漸く鹿田の性格の變化に氣が付いた。夏休前東京で會つた時とは違つて、非常に沈默家になつて居る。
事を言つた。「今朝僕の下宿の隣の家へ東京から女學生が二人來た。自炊をするのだつて云つて。それが
家だ。」と鹿田が指をさして教へた。「東京から女學生が來た家は。」
「お前のとこに來た東京のお客さんは酒を飮むかえ。」
其別莊と云ふのは同じ土地へ東京の人が建てたもので、そこへ毎年學生たちが來るのである。
と寫したものである。それを急に母が郵便で東京に送らうと思つて搜したが見付からなかつた。然し皆別に
では寫眞が一枚無くなつた。姉のおつなが東京の叔母と寫したものである。それを急に母が郵便で東京に
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また或時は……隅田川のボオトレエスの日……彼は鹿田の友達に顏をひどく打たれ