源氏物語 14 澪標 / 与謝野晶子 紫式部None
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初めに斎宮もお変わりになって、六条の御息所は伊勢から帰って来た。それ以来源氏はいろいろと昔以上の好意を表している
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と源氏は明石の入道家のことをくわしく話して聞かせた。母といっしょに父帝のお
国境までは船で、それからは馬に乗って乳母は明石へ着いた。入道は非常に喜んでこの一行を受け取った。感激して京
が盛られたものであろうと思い出していた源氏は、明石の女のことなどはそれに比べて命のある恋愛でもないと思われ
を人に分けていた時代にと思うと恨めしくて、明石の女のために歎息をしている良人は良人であるというように、
完全でないとさえ思った。五十日のために源氏は明石へ使いを出した。
と源氏に命ぜられてあった使いは五日に明石へ着いた。華奢な祝品の数々のほかには実用品も多く添えて源氏
源氏の出立の日の泣き顔とは違った泣き顔である。明石でも式の用意は派手にしてあった。見て報告をする使いが
とした偶然であろう、ほかの月日もないようにと明石の君は驚いたが、はるかに恋人のはなばなしさを見ては、あまりに
靫負佐になってはなやかな赤袍の一人であった。明石に来ていた人たちが昔の面影とは違ったはなやかな姿で人々
言う様子も美しい。こちらの派手な参詣ぶりに畏縮して明石の船が浪速のほうへ行ってしまったことも惟光が告げた。その事実
惟光に渡すと、明石へついて行っていた男で、入道家の者と心安くなっていた
家の者と心安くなっていた者を使いにして明石の君の船へやった。派手な一行が浪速を通って行くのを見
着くころであろうと思ってから間もなく源氏の使いが明石へ来た。近いうちに京へ迎えたいという手紙を持って来たの
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こんな歌も送ったのである。摂津の国境までは船で、それからは馬に乗って乳母は明石へ着いた
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この御代になった初めに斎宮もお変わりになって、六条の御息所は伊勢から帰って来た。それ以来源氏はいろいろと昔以上の好意
に下がって行く者が多くなって、京もずっと下の六条で、東に寄った京極通りに近いのであるから、郊外ほどの寂しさ
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「大臣は亡くなるし、大宮も始終お悪いのに、私さえも余命がないような気がして
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から生まれるということに明石の報せが符合することから、住吉の神の庇護によってあの人も后の母になる運命から、父
あって果たすことのできなかった謝罪も兼ねて、船で住吉へ来た。海岸のほうへ寄って行くと華美な参詣の行列が寄進
この秋に源氏は住吉詣でをした。須磨、明石で立てた願を神へ果たすためであっ
という源氏と辛苦をともにした人たちは、この住吉の神の徳を偉大なものと感じていた。ちょっと外へ源氏の
がよいと思って、明石の君の乗った船はそっと住吉を去った。こんなことを源氏は夢にも知らないでいた。夜通し
住吉の松こそものは悲しけれ神代のことをかけて思へば
「荒かりし浪のまよひに住吉の神をばかけて忘れやはする
たい、近づいてかえって悲しませたことであろうと思った。住吉を立ってから源氏の一行は海岸の風光を愛しながら浪速に出た。
心で憐んでいた。初めのことも今日のことも住吉の神が二人を愛しての導きに違いないと思われて、手紙を
の一行が浪速を立った翌日は吉日でもあったから住吉へ行って御幣を奉った。その人だけの願も果たしたのである