浜松 駿河台 小石川 河田町 静岡 渋谷 神田 東京 荻窪 目白 亀戸 銀座 新橋

旅行案内をとりに行った。幸子の汽車が、静岡と浜松の間を走っている刻限であった。

磯田は近年激しい神経痛に悩まされ、駿河台の脳神経専門家の許で絶えず電気療法を受けていた。朝子などには

と訊いた。浅野というのが駿河台の医者であった。ふっと、老人らしい眼付で窓外の景色を眺めてい

「住まずに考えると、ちょいとごみごみしているようで、小石川のこちら側、なかなか散歩するところがあるでしょう」

「どこです？　今日は――河田町？」

河田町に、兄が家督を継いで、朝子の生家があるのであった。

いた。朝子は一年半程前に夫を失い、河田町の生家に暮していた。幸子と二人で家を持つと決ったとき、

て、旅行案内をとりに行った。幸子の汽車が、静岡と浜松の間を走っている刻限であった。

「いよいよ渋谷ですか」

大きい硝子戸を挾まれて、磯田印刷所がある。震災で、神田からここへ移って来たのだった。

「ずっと東京でした……あなたは？　いかがです、その後」

諸戸は、女房子供を国許に置き、一人東京で家を持っていた。まるで一人暮しなのに、家の小綺麗なこと

、一しお秋が冴えた。そういう一日、朝子は荻窪に住んでいる藤堂を訪ねた。雑誌へ随筆の原稿を頼むためであっ

と見えましてね、この間も省線で、この次は目白だ、と気を張っていても夢中んなっちゃって乗り越す。はっと思っ

「――諸戸さん、亀戸ですか」

朝子は午後から、亀戸の方へ出かけた。市の宿泊所に用があった。かえりに彼女は

銀座で見舞物を買ったりしているうちに、朝子は、変な不安から

―何だかこのまんまお別れするの厭ね、……銀座抜けましょうか」

先刻は幸子と新橋の方から来た、同じ通りを逆の方向から、今度は富貴子と歩い