源氏物語 19 薄雲 / 与謝野晶子 紫式部None

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吉野

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雪間なき吉野の山をたづねても心の通ふ跡絶えめやは

明石

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渡すほうに姫君の幸運があるとばかり言われて、明石は子を放すまいと固執する力が弱って行った。源氏もそうしたく

こともあまりないのであるが、端のほうに来て明石は汀の氷などにながめ入っていた。柔らかな白を幾枚か重ね

行かれるかと思うことで、源氏の訪れに胸騒ぎのする明石であった。自分の意志で決まることである、謝絶すればしいてとはお

ある。道理はよくわかっていて抑制しようとしても明石の悲しさはどうしようもないのである。乳母と少将という若い女房だけ

などにも洗練されたよい趣味を見せていた。明石の君の山荘に比べて近いことは花散里の強味になって、源氏は閑暇

の形式離れのした雅味のある家なのである。明石は源氏が見るたびに美が完成されていくと思う容姿を持ってい

歎かれて、十三絃の出ていたのを引き寄せ、明石の秋の深夜に聞いた上手な琵琶の音もおもい出されるので、自身は

はそれを弾きながら、女にもぜひ弾けと勧めた。明石は少し合わせて弾いた。なぜこうまでりっぱなことばかりのできる女であろうと

のが自分の強味であると思っているのである。明石の入道も今後のいっさいのことは神仏に任せるというようなことも言った

困難にばかりなった。悲観的に人生を見るようになった明石を、源氏はそうした寂しい思いをするのも心がらである、自分の