小さな村 / 原民喜
地名一覧
大阪
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力なく笑ふのであつた。私は彼が罹災者で、大阪から流れ込んで来たことをもう知つてゐた。
さまじかつた。――ところが、その祈祷師が、あの大阪の罹災親爺だとは、私は久しく気づかなかつた。
いつの間にか私の側には、大阪の罹災親爺が立つてゐるのだつた。
広島
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、と私はすぐに傍観者の気持に立還らうとした。広島で遭難してから五日目に、その男は死んでしまつた。この
事を運び、いくぶん浮々した調子すら混つてゐる。広島の惨劇がまだ目さきにちらつく私には、これは多少意外な光景であつ
も火傷でまだ動けない躰だし、妹はその頃、広島へ行つてゐた。……何か弁解してゐる嫂の声はききとれ
「さうすると、広島の奴等はやがてみんな飢ゑ死にか」
、この村は、海岸の町へ出るに一里半、広島から隔たること五里あまり、言語も、習慣も、私たちとさう懸隔れて
もう死の足音が近づいて来るやうな気がした。広島の廃墟をうろつく餓死直前の乞食も眼に泌みついてゐたが、先日
を畳んで、広島へ引上げたのだつた。だが広島へ移つてみても、形勢あやふしと観てとつた彼は
。去年の一月、彼は京城の店を畳んで、広島へ引上げたのだつた。だが広島へ移つてみても、
広島ゆきの電車は、その汽車の踏切から少し離れたR駅に停る。その
東京
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の机で、老人は転出証明を書いてくれた。「東京への転出はどうもむつかしいといふことだがな……」と老人は
東京へ移つて来た私は、その後、たちまち多くの幻滅を味つた