壊滅の序曲 / 原民喜
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琉球列島の戦が終った頃、隣県の岡山市に大空襲があり、つづいて、六月三十日の深更から七月一日の未明
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の上で二つに岐れた編隊の一つは、まっすぐ富士山の方に向い、他は、熊野灘に添って紀伊水道の方へ進む。が
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ええ、御承知の通り現在、我が広島市へは東京をはじめ、名古屋、或は大阪、神戸方面から、つまり各方面の罹災者が続々と相次いで流込ん
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、六月三十日の深更から七月一日の未明まで、呉市が延焼した。その夜、広島上空を横切る編隊爆音はつぎつぎに市民の耳
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「ええ、御承知の通り現在、我が広島市へは東京をはじめ、名古屋、或は大阪、神戸方面から、つまり各方面の罹災者が
そのうちに、宇品港の輪郭がはっきりと見え、そこから広島市の全貌が一目に瞰下される。山峡にそって流れている太田川が、この
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水道から侵入した編隊は佐田岬で迂廻し、続々と九州へ向うのであった。こんどは、この街には何ごともなかったものの
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の通り現在、我が広島市へは東京をはじめ、名古屋、或は大阪、神戸方面から、つまり各方面の罹災者が続々と相次いで流込んでおります
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、広島は。昨夜もまさにやって来るかと思うと、宇部の方へ外れてしまった。敵もよく知っているよ、宇部には重要
方へ外れてしまった。敵もよく知っているよ、宇部には重要工場がありますからな。それに較べると、どうも広島なんか兵隊
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「……備前岡山、備後灘、松山上空」とラジオは艦載機来襲を刻々と告げている。正三の身支度が出来
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「……備前岡山、備後灘、松山上空」とラジオは艦載機来襲を刻々と告げている。
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、そういうことになったのか。してみると、広島は東京よりまず三月ほど立遅れていたわけだね」正三が何
「それだけ広島が遅れていたのは有難いと思わねばならぬではないか」
「ええ、やっぱし広島は危険だし、一そのこと加計町の方へ……」と、康子
正三に云った。「東練兵場に築城本部がある。広島が最後の牙城になるらしいぞ」そういうことを語る清二は――多少
「畑元帥が広島に来ているぞ」と、ある日、清二は事務室で正三に云った
機はその鏡面に散布する島々を点検しながら、悠然と広島湾上を舞っている。強すぎる真昼の光線で、中国山脈も湾口に
月一日の未明まで、呉市が延焼した。その夜、広島上空を横切る編隊爆音はつぎつぎに市民の耳を脅かしていたが、清二
その翌々日、こんどは広島の大空襲だという噂がパッと拡った。上田が夕刻、糧秣廠から
し」そういって彼は水筒の栓を捻った。いま広島の街の空は茫と白んで、それはもういつ火の手があがるかも
気持がした。この戦争が本土決戦に移り、もしも広島が最後の牙城となるとしたら、その時、己は決然と命を
重要工場がありますからな。それに較べると、どうも広島なんか兵隊がいるだけで、工業的見地から云わすと殆ど問題ではないからね
「どうです、広島は。昨夜もまさにやって来るかと思うと、宇部の方へ外れて
の高射砲は中型一機を射落したのであった。「広島は防げるでしょうね」と電車のなかの一市民が将校に対って話しかけると
て、小型機の来襲が数回あったが、白昼、広島上空をよこぎるその大群は、何らこの街に投弾することがなかったばかり
……だが、広島が助かるかもしれないと思いだした人間は、この大谷ひとりではなかった
「どうか神様、三日以内にこの広島が大空襲をうけますように」
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現在、我が広島市へは東京をはじめ、名古屋、或は大阪、神戸方面から、つまり各方面の罹災者が続々と相次いで流込んでおります。
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いうことになったのか。してみると、広島は東京よりまず三月ほど立遅れていたわけだね」正三が何の意味
現したのはこれがはじめてであった。――昨年来、東京で見なれていた正三には久し振りに見る飛行機雲であった。
「ええ、御承知の通り現在、我が広島市へは東京をはじめ、名古屋、或は大阪、神戸方面から、つまり各方面の罹災者が続々と
オレハ コウトウスウガクノケンキュウヲシテイルノダ スウガクハウツクシイ ニホンノゲイジュツカハ コレガワカラヌカラダメサ」こんな風な手紙が東京の友人から久し振りに正三の手許に届いた。岩手県の方にいる友から
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……だが、彼の足はその堤を通りすぎると、京橋の袂へ出、それから更に川に添った堤を歩いてゆく。清二