断腸亭日乗 04 断腸亭日記巻之三大正八年歳次己未 / 永井荷風
地名一覧
地名をクリックすると地図が表示されます
思出し、取りまとめて江戸藝術論と題し、之を与ふ。午後四谷に徃き、曾て家に召使ひたるお房を訪ふ。
地名をクリックすると地図が表示されます
八月六日。丸の内に用事あり。途次日比谷公園の樹※に憩ふ。
十月四日。秋※漫歩に適す。丸の内を歩み、神田仏蘭西書院に至り小説二三巻を購ふ。
地名をクリックすると地図が表示されます
六月十七日。明治座にて名題下若手俳優の稽古芝居を看る。小山内平岡の二子に逢ひ、帰途
月廿六日。松莚子細君同伴にて来り訪はる。来春明治座にて岡君新作の小猿七之助を演ずるにつき、其の着附仕草などの参考に
地名をクリックすると地図が表示されます
明月屋根の間より斜に窗を照したり。留守中箱崎町の大工銀次郎麻布普請の絵図面を持参す。
地名をクリックすると地図が表示されます
株。猪苗代水電会社壱百株を買ふ。盖し余丁町売宅の金を以てす。
地名をクリックすると地図が表示されます
に似たり。街頭の楊柳猶青し。唖々子と共に牛込の旗亭桃川に飲む。庭上虫猶啼く。
十一月二日。夕刻人形町通にて図らず牛込の妓菊五郎に逢ふ。近頃葭町に住替へしたりといふ。夜木曜会
地名をクリックすると地図が表示されます
有楽座に人形芝居を観る。大坂文楽一座のものなり。大阪の傀儡劇は今日江戸時代の演劇浄瑠璃凡て頽廃せむとする時、更に其の
地名をクリックすると地図が表示されます
月廿八日。午後神田三才社に徃く。途次駿河台に松莚子を訪ふ。夕刻自由劇塲出勤の頃まで款語す。
地名をクリックすると地図が表示されます
甚安ぜざるところあり。然れどもこゝに幕末乱世の際、江戸の浮世絵師戯作者輩のなせし所を見るに、彼等は兵馬倥※の
地名をクリックすると地図が表示されます
四月四日。夜寒からず。漫歩佃の渡し場に至り河口の夜景を観る。
地名をクリックすると地図が表示されます
五月三十一日 新月鎌の如し。明石町の海岸を歩む。
八月七日。半輪の月佳なり。明石町溝渠の景北寿が浮絵を見るが如し。
十月八日。仲秋の月よし。明石町海岸を歩む。去年の仲秋は九月十九日にて同じく晴れたり。両年つゞいて
年は稀なるべし。毎日薄暮水上の景を見むとて明石町の海岸通を歩む。
地名をクリックすると地図が表示されます
この老婆武州柴又辺の農家に生れたる由。余が家小石川に在りし頃出入の按摩久斎といふものゝ妻なりしが、幾ばくもなく
地名をクリックすると地図が表示されます
今村氏の家は銭屋五兵衛とは遠き縁つゞきの由。金沢市外の海岸なる街道筋に一株の古松あり。徃昔銭屋の一族処刑せられ
地名をクリックすると地図が表示されます
四月七日。春宵漸く漫歩によし。八丁堀の講釈塲を過るに典山英昌等の看板を見る。木戸銭を払うて
四月十九日。八丁堀を歩みて夜肆を見る。この辺建具屋簾屋など多し。小夜ふけし
地名をクリックすると地図が表示されます
の加賀屋にて薗八節さらひあり。余鳥辺山を語る。宮川曼魚は夕霧をかたる。
地名をクリックすると地図が表示されます
糸切れたるをつくらふ。たま/\思起せば八重次四谷荒木町にかくれ住みし頃、絵本虫撰山復山など綴直し呉れたり。むかし思へ
地名をクリックすると地図が表示されます
七月九日。浅草寺四万六千日の賽日なれど珍しく空晴れて風涼し。午後三菱銀行に赴く。
地名をクリックすると地図が表示されます
十一月朔。赤坂氷川町の売家を見る。其の途次氷川神社の境内を過ぐ。喬木欝蒼たること芝山内また上野などにまさりたり。市中今
十一月十二日。重て麻布市兵衛町の貸地を検察す。帰途氷川神社の境内を歩む。岨崖の黄葉到処に好し。日暮風漸く寒し。
地名をクリックすると地図が表示されます
三月三十日。築地本願寺の桜花を観る。此寺は堂宇新しく境内に樹木少く市内の寺院の中最
地名をクリックすると地図が表示されます
春唖※子及び浜町の私娼おとしと共に、秋葉の有馬温泉に遊びし帰途なりき。指を屈すれば早くも十一年を経たり。入金
地名をクリックすると地図が表示されます
十一月廿六日。松莚子に招がれて東仲通の末広に飲む。河原崎権十郎、川尻清潭、瀬戸英一の三子亦来る。帰途清潭子に
地名をクリックすると地図が表示されます
十月十五日。薄暮愛宕山に登る。眼下の市街人家の屋根次第に暗くなりて、日の暮れ行くさま、久しく
地名をクリックすると地図が表示されます
三月十四日。竹田屋芳幾の錦絵両国八景といふものを持参す。明治初年に於ける旗亭妓女の風俗資料、追々あつ
七月十九日。雷鳴り驟雨来る。両国河開中止となりし由。
地名をクリックすると地図が表示されます
四月十七日。午後散策。日※町通を過ぎて芝公園を歩む。桜花落尽して満山の新緑滴るが如し。帰途歌舞伎座木戸前を
して、而も樹木多き山の手に居を卜したきものなり。帰途芝公園瓢箪池の茶亭に憩ふ。秋の日早くも傾き、やがて黄昏の微光
地名をクリックすると地図が表示されます
八月六日。丸の内に用事あり。途次日比谷公園の樹※に憩ふ。
国手在らず。空しく帰宅す。※時また家を出で、日比谷公園を歩み、樹下の榻に憩ひミルボオが短篇小説集ピープドシードルを読む。夜
屋の手代藝苑叢書を持参す。午後一睡の後、日比谷公園の樹間に読書す。晩秋の斜陽黄葉に映ず。
地名をクリックすると地図が表示されます
甚し。日本人は遂に都市を建設する能力なきものゝ如し。上野公園の老杉古松の枯れ行くさま予想以上なり。夕餉の後旧著日和下駄その他を
地名をクリックすると地図が表示されます
九日。有楽座に常磐津文字兵衛のさらひあり。適平岡松山の二画伯に会ふ。
五月廿七日。清元会にて平岡松山の二子に逢ふ。
九月四日。カルメンを聴く。帰途松山画伯とぷらんたんに飲む。
あり。パリアツチ及カワレリヤルスチカナの二曲なり。劇場を出で、久米松山の二氏と平岡君が采女町の画室を訪ふ。倶に精養軒にて晩餐
地名をクリックすると地図が表示されます
を残すのみ。人※これを銭屋の松と称へ、金沢名所の一つとはなれり。今村君こゝに石碑を建て、古枩
五月十八日。旧友今村次七君金沢より上京。路地裏の寓居に来訪せらる。今村氏の家は銭屋五兵衛
地名をクリックすると地図が表示されます
の事屡なり。且又この度有楽座に来りしは京都の人形なりと言はれぬ。此夜幸に雨なかりしが空模様いよ/
地名をクリックすると地図が表示されます
食し、三田文学会に赴く。与謝野寛氏と久振りにて巴里漫遊のむかしを談ず。
地名をクリックすると地図が表示されます
学校に赴く。溝店祖師堂に近きところなり。校内にて下谷の貞二郎大久保の母上に逢ふ。感慨窮なし。此れにつけても憎む
十月十三日。下谷の姪光代絵葉書を寄せ、女学校紀念会の催しに来らむ事を請ふ。
十一月三日。下谷七軒町女学校の運動会を観る。
地名をクリックすると地図が表示されます
を売り旅亭に在りし時、珈琲なきを以て、銀座の三浦屋より仏蘭西製のシヨコラムニヱーを取りよせ、蓐中にてこれを啜りしに
正月七日。林檎麺麭其他食料品を購はむとて、夕刻銀座に徃く。三十間堀河岸通の夕照甚佳なり。
る。風ありしが寒気甚しからず。帰途久米氏と銀座を歩み、平岡君の病を問ふ。
二日。晩間松莚子細君を伴うて来り訪はる。銀座風月堂に至り晩餐の馳走に与かる。
十三日。午後坂井清君来談。夜夕餉をなさむとて銀座通に出でゝ見るに、花見帰りの男女雑※せり。
半時ばかりにして晴る。夕刻梅吉夫婦妓八郎等と銀座風月堂に晩餐をなす。
の稽古芝居を看る。小山内平岡の二子に逢ひ、帰途銀座の風月堂に晩餐をなす。
六月廿二日。銀座通にて画人岡野栄氏に逢ふ。
来訪。国民文藝会脚本執筆の事を依嘱せらる。夜銀座通草市にて花月楼主人に逢ひぷらんたん亭に小酌す。
されど老婆しん死去してより日常のこと不便殆忍びがたし。銀座風月堂に赴き晩餐をなす。
を読みつゝ茶を喫す。公園を出れば既に夜なり。銀座風月堂にて独酌晩餐を食し、三田文学会に赴く。与謝野寛氏と久
なり臨時の客を謝して入れず。已むことを得ず銀座に至り、風月堂に飲む。枕上ヱストニヱーの小説 L'Emprinte を読む
。終日校正並に執筆。薄暮合引橋河岸通を歩み、銀座に出で食料品を購ひ帰る。
十月廿五日。唖※子来る。雨中銀座のカツフヱーに飲む。
十一月廿三日。銀座義昌堂にて支那水仙を購ひ、午後母上を訪ふ。庭前の楓葉
尺牘漫筆の類数巻を購ふ。風月堂にて晩餐をなし銀座通の雑沓を過ぎて家に帰る。枕上コレツト・ウヰリイの小説レトレート、サンチマンタル
地名をクリックすると地図が表示されます
。櫓下の妓家増田屋の女房、妓八重福と、浜町の小常磐に飲む。夜桜木にて哥沢芝きぬに逢ひ梅ごよみを語る。
正月廿七日。浜町の袋物屋平野屋を呼び、所持の烟草入のつくろひをなさしむ。
に一酌せしは明治四十二年の春唖※子及び浜町の私娼おとしと共に、秋葉の有馬温泉に遊びし帰途なりき。指
地名をクリックすると地図が表示されます
三月十八日。春日麗朗。午後神田三才社を訪ふ。
五月廿八日。神田一ツ橋通三才社に行く。
九月廿八日。午後神田三才社に徃く。途次駿河台に松莚子を訪ふ。夕刻自由劇
十月四日。秋※漫歩に適す。丸の内を歩み、神田仏蘭西書院に至り小説二三巻を購ふ。
十月十二日。朝、神田末広町竹田屋の手代藝苑叢書を持参す。午後一睡の後、日比谷公園の
。晴天。午後市中大晦日の景况を見むとて漫歩神田仏蘭西書院に赴き、フロオベル全集中尺牘漫筆の類数巻を購ふ。風月堂
地名をクリックすると地図が表示されます
ゝかに晴渡りて表通下駄の音俄に稠し。日本橋倶楽部にて清元一枝会下ざらひあり。
三月廿三日。夜日本橋倶楽部にて清元一枝会温習会あり。権八上の段を語る。初更微雨須臾
五月十六日。日本橋の加賀屋にて薗八節さらひあり。余鳥辺山を語る。宮川曼魚は夕霧
六月六日。夕刻より日本橋若松家にて玄文社合評会あり。※雲天を閉さして雨ふらず
好箇の小品文をなし得べしと、思ひを凝しぬ。夜日本橋若松屋にて玄文社観劇合評会あり。
七月卅一日。玄文社劇評家懇談会日本橋の若松屋に開かる。此夜有楽座人形芝居の事を岡鬼太郎君に
合評会。つゞいて綺堂松葉両子帰朝祝賀の宴。共に日本橋若松家に開かる。半月空に泛び淡烟蒼茫として街を罩め
地名をクリックすると地図が表示されます
ぬ。爾来二十余年の星霜を経たり。去年の冬大久保の家を売払ひし折、余は其の請ふがまゝに暇をつかは
秋を報ず。午後散策。山の手の電車に乗り図らず大久保旧宅のほとりを過ぐ。感慨限りなし。
物干よりさし込む日の光、眩しきこと夏の如し。曾て大久保の村居に在りし時、今日のやうなる残暑の昼過ぎ、鳳仙花、葉
の微光樹間にたゞよふさま言はむ方なし。曾て大久保の家に在りし頃には、市中の公園は徒に嫌悪の情
四鄰の湫隘なるに堪へやらぬ心地す。軍馬の徃来大久保の如くに烈しからずして、而も樹木多き山の手に居を卜したきものなり
。溝店祖師堂に近きところなり。校内にて下谷の貞二郎大久保の母上に逢ふ。感慨窮なし。此れにつけても憎むべきはかの
に避く。山茶花既に散り、八手漸く花をつくるを見る。大久保旧宅の庭園を思出して愁然たり。
十一月十四日。去年の日記を見るに大久保宅地売払の約束をなせしは十一月十三日なり。今年同月同日に地所
地名をクリックすると地図が表示されます
六月十九日。くもりて風涼し。午後浅草公園を歩む。観音堂後の銘酒屋楊弓店悉く取払ひとなり、その
七月九日。浅草寺四万六千日の賽日なれど珍しく空晴れて風涼し。午後三菱銀行に
七月廿一日。浅草代地河岸稲垣にて清元香風会さらひあり。楼上より百本杭を望む水上
を感動せしむるものはなし。驟雨の霽るゝを待ち、浅草七軒町の女学校に赴く。溝店祖師堂に近きところなり。校内にて下谷
地名をクリックすると地図が表示されます
を休みたり。路地裏も家毎に国旗を出したり。日比谷辺にて頻に花火を打揚る響聞ゆ。路地の人々皆家を空しくし
十月廿九日。大掃除なり。塵埃を日比谷図書館に避く。山茶花既に散り、八手漸く花をつくるを見る。大久保旧宅の
地名をクリックすると地図が表示されます
。今宵も月明かにして、涼風吹きて絶えず。東京の夏は路地裏に在りても涼味此の如し。避暑地の旅館に徃
地名をクリックすると地図が表示されます
。小春の空晴渡りぬ。陋屋の蟄居に堪えず歩みて目黒不動の祠に詣づ。惣門のほとりの掛茶屋に憩ひて境内を眺
地名をクリックすると地図が表示されます
其儘車中に坐するに、忽ち新宿を後にして遂に上野の停車場に至る。已むことを得ず車を下り雨を山王台の茶亭
途次氷川神社の境内を過ぐ。喬木欝蒼たること芝山内また上野などにまさりたり。市中今尚かくの如き幽邃の地を存するは意外の
地名をクリックすると地図が表示されます
の晴るゝを待たむとて其儘車中に坐するに、忽ち新宿を後にして遂に上野の停車場に至る。已むことを得ず車を
地名をクリックすると地図が表示されます
亦晴天を幸に、有楽町より山の手線の電車に乗る。品川に近づく頃一天俄に暗く、雷鳴驟雨三伏の時※に似たり。雨
は何処に行きしや。そは明朝に至るを俟つて品川湾頭に飛ぶ白鴎に問ふ可し
地名をクリックすると地図が表示されます
の興をおぼえたれば、今日も亦晴天を幸に、有楽町より山の手線の電車に乗る。品川に近づく頃一天俄に暗く、雷鳴驟雨
地名をクリックすると地図が表示されます
十月十二日。朝、神田末広町竹田屋の手代藝苑叢書を持参す。午後一睡の後、日比谷公園の樹間
地名をクリックすると地図が表示されます
十一月二日。夕刻人形町通にて図らず牛込の妓菊五郎に逢ふ。近頃葭町に住替へしたり
地名をクリックすると地図が表示されます
薄暮所用の途次車にて土手三番町を過ぐ。市ヶ谷の高台を望み見たる夕陽の景甚佳なり。