東京市 豪徳寺 目黒 渋谷 大崎 東京 大久保

の山内はいずれもわが家を去ること遠くはない。現代の東京市中に卜居してかくの如く落葉に親しむ事の出来るのはせめて不幸中の

ていた時分である。写真機を肩にして世田ヶ谷の豪徳寺をたずねた帰り道。その時も目黒へ廻った。短い秋の日が矢張暮れ

目黒

肩にして世田ヶ谷の豪徳寺をたずねた帰り道。その時も目黒へ廻った。短い秋の日が矢張暮れかかろうとしている時分であっ

辺の茶屋で何か食べた事があるようである。目黒は竹藪ばかり繁った処だと行帰りの車の上で見た当時の

も既に半に近づこうとしている。四十年の間に目黒へ来た事も数えて見ると今度でたった四度にしかならない

て二百二十日を待ち構える頃の或日の午後である。下渋谷に住んでいる友人が愛児を失ったという報知に接してＡ君と

あった。いわれもなく停車場の方へと急いで行く道すがら大崎の森から大きな月の昇るのを見た。

太陽暦では十二月の二十日前後に当る。十二月は東京の冬の最もうつくしい時節である。寒気もまださして厳しくはない。一枚

の山内はいずれもわが家を去ること遠くはない。現代の東京市中に卜居してかくの如く落葉に親しむ事の出来るのはせめて不幸

ある。多年出入りの竹田屋という古書肆の主人が毎日大久保の庭の上に家財道具を運び出して売るものと残すものとを択り分けて

四年前戊午の年大久保の家を売払って築地の路地に引移ろうとしたのは丁度落葉の

て、覚えず愁然とする事がある。わたしが常に大久保の旧廬を思うて止まない所以はわが青春のあらゆる記憶のここに宿る