小石川 増上寺 東照宮 ポンペイ 巴里 浅草 東京 内幸町 日比谷

ない時分ではなかったか。桜のさく或日の午後小石川の家から父と母とに連れられてここまで来るには車の上ながら

あろう。けれども我が木造の霊廟は已にこの間も隣接する増上寺の焔に脅かされた。凡ての物を滅して行く恐しい「時間」の力

代将軍の霊廟から、中央にある六代将軍、最後に増上寺を隔てて東照宮に隣りする二代将軍の霊廟を参拝したのである。

、中央にある六代将軍、最後に増上寺を隔てて東照宮に隣りする二代将軍の霊廟を参拝したのである。この事は已に

ポンペイの古都は火山の灰の下にもなお昔のままなる姿を保存して

紅雨は生涯忘れない美的感激の極度を経験したと信ずる巴里の有名なる建築物に対した時の心持に思い較べて、芝の霊廟はそれ

お堂がいくつもあって、その階の前で自分は浅草の観音さまのように鳩の群に餌を撒いてやったが何故この

ここまで来るには車の上ながらも非常に遠かった。東京の中ではないような気がした。綺麗な金ピカなお堂が

夕靄の中に暮れて行く外濠の景色を見尽して、内幸町から別の電車に乗換えた後も絶えず窓の外に眼を注いで

する気もなく、不体裁なる洋服を着た貴族院議員が日比谷の議場に集合する光景に思い至らねばならぬ。