江戸 小石川 明治座 金剛寺坂 東京

隠密」であるとの噂が専らとなったので、江戸の町人は鳥さしの姿を見れば必不安の思をなしたというはなしで

不安の思をなしたというはなしである。わたくしが折々小石川の門巷を徘徊する鳥さしの姿を目にした時は、明治の世

明治三十年の春明治座で、先代の左団次が鋳掛松を演じた時、鋳掛屋の呼び歩く声を真似する

た雪駄直しや鳥さしなどを目撃したのも、是皆金剛寺坂のほとりに在った旧宅の門外であった。雪駄直しは饅頭形の籐

の声がわたくしには耳新しく聞きなされた。然しこれとても、東京の市街は広いので、わたくしが牛込辺で物めずらしく思った時には

全く絶えたようである。されば之に代って昭和時代の東京市中に哀愁脉々たる夜曲を奏するもの、唯南京蕎麦売の簫がある