小石川 駿河台 松江 下谷 東京 目白 赤坂見附 日比谷

小石川の家の庭は六十年後の今日、たま／＼散歩する塀外の道路から

小石川の庭に始て英吉利の貴夫人を見た時から、思ふに又一二年

年を過ぎたころであらう。わたくしは祖母につれられて駿河台の鈴木町に住んでゐた独逸の宣教師の家に行き、茶菓を饗せられ

その時分駿河台なる牧師の家に日本の学生が四五人寄寓してゐた。その中に

授けようがため、赤坂見附内に残つてゐた旧松江侯の藩邸を校舎に当てゝゐた事にまで溯らねばならない。

たる貴夫人ミセスコルキスが当時校舎と住所とに当てゝゐた松江藩の旧邸には、折々慈善事業のためバザーと称して、女生徒のつくる手

其枕辺に来て祈祷をしたことなどは、既に「下谷の家」と題した小品文にこれを述べたことがあるから、重ねて

てゐない他の一人はシユミイデルと呼ばれた。祖母が下谷の家で永眠した時、牧師スピンネルが其枕辺に来て祈祷をし

な地に於て、之を見出し得るかも知れない。東京といふ都会はいかにもひろく、いかにも不思議な処である。

と変りはないのである。事々物々変化せざるはなき東京の町中に在つて、わたくしが生れた金富町のこの横町のやうに、

かくの如き有様で、東京に居住した一部の人々の生活は、議会創立の年の近づくにつれ

の落尽すころになると、江戸川の流を越して目白の高台から早稲田の反圃、また赤城明神の崖裏までが一目に見渡され

教育を日本の上流社会及び知識階級の妻女に授けようがため、赤坂見附内に残つてゐた旧松江侯の藩邸を校舎に当てゝゐた

日比谷の鹿鳴館に洋風の舞踏会が催されたのは其時代の事で、日本