鴨川 関西 東京府 大阪 玉の井 吾妻橋 江戸 東清寺 神田錦町 東京市 秋葉神社 吉原遊廓 雷門 九州 横浜 本所 日比谷公園 下谷 深川 浅草 東京 千住 新橋 銀座 堀切 上野 向島 駒込 赤坂見附 麹町 日本橋 三越前 月島 日比谷 浅草橋 京橋 隅田川

、夥多の実例に徴して深く説明するにも及ぶまい。鴨川の芸妓は幕吏に追われる志士を救い、寒駅の酌婦は関所破りの博徒に

ように夕方になるとぱったり凪いでしまって、夜はさながら関西の町に在るが如く、深けるにつれてますます蒸暑くなるような日が幾日

同じ業をつづけているものは数えるほどで、今は悉く関西もしくは九州から来た人の経営に任ねられた。裏通の到る処に海

を通ったことを聞いた。そして、其夜の花電車は東京府下の町々が市内に編入せられたことを祝うためであった事を

、蓋し已むことを得ざる結果で、これまた其範を大阪に則ったものだという事である。

を忍ぶ処を、この辺の裏町にして置いたら、玉の井の盛場も程近いので、結末の趣向をつけるにも都合がよかろうと考え

「向嶋の終点。秋葉さまの前よ。バスなら真直に玉の井まで行くわ。」

「玉の井――こんな方角だったかね。」

ても済まないから、僕は今夜だけ何処かで泊ろう。玉の井でも見物しよう。」

「玉の井で幾軒も店や家を持ってる人よ。もう七十位だわ。精力家

に樹木の鬱然と生茂った広大な別荘らしいものがある。吾妻橋からここに来るまで、このように老樹の茂林をなした処は一箇所も

吾妻橋のまん中ごろと覚しい欄干に身を倚せ、種田順平は松屋の時計を眺め

昭和五年の春都市復興祭の執行せられた頃、吾妻橋から寺島町に至る一直線の道路が開かれ、市内電車は秋葉神社前まで、市営バス

の命令で禁止せられた事もあった。東京では江戸のむかし山の手の屋敷町に限って、田舎から出て来た奉公人が盆踊を

百合夏菊などの鉢物に時ならぬ花壇をつくっている。東清寺本堂建立の資金寄附者の姓名が空地の一隅に板塀の如くかけ並べてあるの

気な記憶をたどれば、明治三十年頃でもあろう。神田錦町に在った貸席錦輝館で、サンフランシスコ市街の光景を写したものを見た

ことができないとの事であった。それはとにかく、東京市内の公園で若い男女の舞踏をなすことは、これまで一たびも許可せ

広い道を左に折れて源森橋をわたり、真直に秋葉神社の前を過ぎて、また姑く行くと車は線路の踏切でとまった。

橋を渡り終らぬ中に流しの円タクが秋葉神社の前まで三十銭で行く事を承知した。

は通過る道の両側を眺めている中、自動車は早くも秋葉神社の前に来た。すみ子は戸の引手を動しながら、

吾妻橋から寺島町に至る一直線の道路が開かれ、市内電車は秋葉神社前まで、市営バスの往復は更に延長して寺島町七丁目のはずれに車庫を設ける

吉原遊廓の近くを除いて、震災前東京の町中で夜半過ぎて灯を消さない飲食店は、

に比べると、だんだん苦にならないようになる。京橋と雷門との乗替も、習慣になると意識よりも身体の方が先に動いて

を掛けるようになってから全く廃せられていたが、雷門までの遠道を往復するようになって再び之を行うことにした。然し

盛場の西南に玉の井駅を設け、夜も十二時まで雷門から六銭で人を載せて来るに及び、町の形勢は裏と表と

雷門から円タクを傭って家に帰ると、いつものように顔を洗い髪を掻直し

がないと言っても、それは決して誇張ではない。雷門からはまた円タクを走らせ、やがていつもの路地口。いつもの伏見稲荷。ふと

をつづけているものは数えるほどで、今は悉く関西もしくは九州から来た人の経営に任ねられた。裏通の到る処に海豚汁や

「このあいだ横浜までドライブしたら、帰り道には明くなったわ。」

描写したいが為に、種田先生の潜伏する場所を、本所か深川か、もしくは浅草のはずれ。さなくば、それに接した旧郡部の

催しは中止となった事を聞いていたので、日比谷公園に公開せられた東京音頭の会場にも何か騒ぎが起りはせぬ

て、おのずから其巧拙をも比較することができる。わたくしは下谷浅草の方面へ出掛ける時には必ず思出して公園に入り杖を池の縁

幕府瓦解の際、成島柳北が下谷和泉橋通の賜邸を引払い、向島須崎村の別荘を家となして

たいが為に、種田先生の潜伏する場所を、本所か深川か、もしくは浅草のはずれ。さなくば、それに接した旧郡部の陋巷

。曾て、（明治三十五六年の頃）わたくしは深川洲崎遊廓の娼妓を主題にして小説をつくった事があるが、その

ふと思出した旧作の句である。半は亡友唖々君が深川長慶寺裏の長屋に親の許さぬ恋人と隠れ住んでいたのを、其

の市電終点から日本橋の四辻に来たことがあった。深川の暗い町を通り過ぎた電車から、白木屋百貨店の横手に降りると、燈火の

、おのずから其巧拙をも比較することができる。わたくしは下谷浅草の方面へ出掛ける時には必ず思出して公園に入り杖を池の縁に

写真の看板を一度に最多く一瞥する事のできるのは浅草公園である。ここへ来ればあらゆる種類のものを一ト目に眺めて

、一筋は白髯橋の方へ走り、それと交叉して浅草公園裏の大通が言問橋を渡るので、交通は夜になっても

た女すみ子と偶然電車の中で邂逅し、其女が浅草駒形町のカフエーに働いている事を知り、一二度おとずれてビールの酔を

、種田先生の潜伏する場所を、本所か深川か、もしくは浅草のはずれ。さなくば、それに接した旧郡部の陋巷に持って行く

とわたくしは京橋で乗換の電車を待っていた時、浅草海苔を買ったことを思い出して、それを出した。

車の通る表通から路地の内へと引込ませられた。浅草の旧地では凌雲閣の裏手から公園の北側千束町の路地に在ったもの

此盛場の沿革を述べようか。大正七八年の頃、浅草観音堂裏手の境内が狭められ、広い道路が開かれるに際して、むかしから

まま白髯橋の方へ歩みを運んだ。後の方から浅草行の京成バスが走って来たが、わたくしは停留場のある処をよく

診察日なんだよ。十一時にしまうから、一緒に浅草へ行かない。四時頃までに帰って来ればいいんだから。」

顔立、物腰、言葉使から着物の着様に至るまで、東京の下町生粋の風俗を、そのまま崩さずに残しているのが、わたくし

わたくしは東京市中、古来名勝の地にして、震災の後新しき町が建てられ

「そう……でも東京じゃないわ。」

「東京のいまわりか。」

なく、場末の町のわびしさを歌っているのに、東京の言葉はこの十年の間に変れば実に変ったものである。

「ひる前」を「しる前」に書き誤っているのは東京下町言葉の訛りである。竹屋の渡しも今は枕橋の渡と共に

「暫く東京にいたもの。」

わたくしはこの東京のみならず、西洋に在っても、売笑の巷の外、殆その他

が是また勝手次第なので、啻に気候のみならず、東京中の建築物とも調和して、いかにも復興都市の住民らしい心持になること

じだらくに居れば涼しき二階かな。」で、東京の気候の殊に暑さの甚しい季節には最適合している。朦朧円タク

ない事を証明しているので、わたくしは遠い地方から東京に移住した人達の間に生れた娘と見ている。性質は

、其顔立と全身の皮膚の綺麗なことは、東京もしくは東京近在の女でない事を証明しているので、わたくしは遠い地方から

ないが、其顔立と全身の皮膚の綺麗なことは、東京もしくは東京近在の女でない事を証明しているので、わたくしは遠い

われわれ東京の庶民が満洲の野に風雲の起った事を知ったのは其の前の年

冷却すれば香気は全く消失せてしまう。然るに現代の東京人は冷却して香気のないものでなければ之を口にしない。

停車場構内の飲食店、また百貨店の食堂で見覚えた事は悉く東京の習慣だと思込んでいるので、汁粉屋の看板を掛けた店

いる事がこれを明にしている。地方の人は東京の習慣を知らない。最初停車場構内の飲食店、また百貨店の食堂で見覚えた

より先、まだ残暑のさり切らぬころ、日比谷の公園に東京音頭と称する公開の舞踏会が挙行せられたことをも、わたくしはやはり見

を通ったことを聞いた。そして、其夜の花電車は東京府下の町々が市内に編入せられたことを祝うためであった

とかしてあった。何か事のある毎に、東京の街路には花電車というものが練り出される。今より五年前帚

には県知事の命令で禁止せられた事もあった。東京では江戸のむかし山の手の屋敷町に限って、田舎から出て来た

ことができないとの事であった。それはとにかく、東京市内の公園で若い男女の舞踏をなすことは、これまで一たびも

東京音頭は郡部の地が市内に合併し、東京市が広くなったのを祝するために行われたように言われてい

東京音頭は郡部の地が市内に合併し、東京市が広くなったの

事を聞いていたので、日比谷公園に公開せられた東京音頭の会場にも何か騒ぎが起りはせぬかと、内心それを

た。翁は郷里の師範学校を出て、中年にして東京に来り、海軍省文書課、慶応義塾図書館、書肆一誠堂編輯部其他

わたくしは東京の人が夜半過ぎまで飲み歩くようになった其状況を眺める時、この新しい

吉原遊廓の近くを除いて、震災前東京の町中で夜半過ぎて灯を消さない飲食店は、蕎麦屋より外はなかった

。わたくしは箸を擱くと共にすぐさま門を出で、遠く千住なり亀井戸なり、足の向く方へ行って見るつもりで、一先電車で

方も至極不意気にすれば、南は砂町、北は千住から葛西金町辺まで行こうとも、道行く人から振返って顔を見られる気遣い

はうっかり行かれないような事が起った。それは震災前新橋の芸者家に出入していたと云う車夫が今は一見して人殺し

た小林時計店の鐘の音が、明治のはじめには新橋八景の中にも数えられていた事などを語り出す。わたくしは明治

ような心持になっている。之に加えて、其後銀座通にはうっかり行かれないような事が起った。それは震災前新橋の

神代帚葉翁が生きていた頃には毎夜欠かさぬ銀座の夜涼みも、一夜ごとに興味の加るほどであったのが、其

ただ独恐る可きは操觚の士である。十余年前銀座の表通に頻にカフエーが出来はじめた頃、此に酔を買った事

ある。創作「失踪」の実地観察。ラディオからの逃走。銀座丸ノ内のような首都枢要の市街に対する嫌悪。其他の理由もあるが

である。わたくしをして、然う思わせるだけでも、銀座や上野辺の広いカフエーに長年働いている女給などに比較したなら、

て此の場末に来れば、いかなる雑沓の夜でも、銀座の裏通りを行くよりも危険のおそれがなく、あちこちと道を譲る煩しさ

、歌をうたい、通行の女子を罵りつつ歩くのは、銀座の外他の町には見られぬ光景であろう。然るに一たび古

端無くも銀座あたりの女給と窓の女とを比較して、わたくしは後者の猶愛す

そのころ、わたくしは大抵毎晩のように銀座尾張町の四ツ角で翁に出逢った。翁は人を待合すのに

の家に帰る時、いつも最終の電車を尾張町の四辻か銀座三丁目の松屋前で待っている間、同じ停留場に立っている花売

なしをした事があったのを思出した。翁は銀座から駒込の家に帰る時、いつも最終の電車を尾張町の四辻か銀座三

糸切歯を出して笑う口元から、わたくしは忽ち四五年前、銀座の裏町で帚葉翁と共にこの娘とはなしをした事が

門附の娘はわたくしが銀座の裏通りで折々見掛けた時分には、まだ肩揚をして三味線を持たず

「おかしいものか。お前も銀座仕込じゃないか。」

って、何処だって、いいことはないよ。だけれど、銀座はあぶれると歩いちゃ帰れないし、仕様がないからね。」

銀座では電車賃をやった事もあったので、其夜は祝儀五十銭

帚葉翁とわたくしとが、銀座の夜深に、初めてあの娘の姿を見た頃と、今年図らず寺島町

時候がよく、日曜日に当っていたので、其夕銀座通はおびただしい人出であったが電信柱に貼付けられた号外を見ても群集

は柳まつりの翌月であった。わたくしは丁度其夕、銀座通を歩いていたので、この事を報道する号外の中では

たのは、次の年の四月ごろであった。わたくしは銀座に立てられた朱骨のぼんぼりと、赤坂溜池の牛肉屋の欄干が朱

歩道に朱骨の雪洞が造り花の間に連ねともされ、銀座の町が宛ら田舎芝居の仲の町の場と云うような光景を呈し出し

銀座通に柳の苗木が植えつけられ、両側の歩道に朱骨の雪洞が造り花

尾張町の三越前に立ち現れたのはその頃からであった。銀座通の裏表に処を択ばず蔓衍したカフエーが最も繁昌し、又最も

地下鉄道は既に京橋の北詰まで開鑿せられ、銀座通には昼夜の別なく地中に鉄棒を打込む機械の音がひびきわたり、

ことばかりであったので、昭和七年の夏、偶然銀座通で邂逅した際には、わたくしは意外の地で意外な人を

ようにする事や、それ等のためにまたしても銀座へ出かけはじめたのであるが、新聞と雑誌との筆誅を恐れて、

わたくしは昭和二三年のころから丁度其時分まで一時全く銀座からは遠のいていたのであったが、夜眠られない病気が年

知っていた。一夜翁がわたくしを案内して、西銀座の裏通にあって、殆ど客の居ない万茶亭という喫茶店へつれて

た事がないので、若し銀座を歩く人の中で銀座のアイスクリームを知らない人があるとしたなら、それは恐らくわたくし一人のみ

今日まで一度も口にした事がないので、若し銀座を歩く人の中で銀座のアイスクリームを知らない人があるとしたなら

銀座通のカフエーで夏になって熱い茶と珈琲とをつくる店は殆ど無い

わたくしは翁の談話によって、銀座の町がわずか三四年見ない間にすっかり変った、其景況の大略を

出身の紳士が野球見物の帰り群をなし隊をつくって銀座通を襲った事を看過するわけには行かない。彼等は酔に

、腰を抱き合いして、表通といわず裏通といわず銀座中をひょろひょろさまよい歩く。これも昭和になってから新に見る所の景況

孤影悄然として猶且つ悲しまざるが如きものもある。銀座の表通に燈火を輝すカフエーを城郭となし、赤組と云い白組と称する

過ぎていたかも知れない。給仕人から今しがた花電車が銀座を通ったことを聞いた。そして、其夜の花電車は東京府下の

が練り出される。今より五年前帚葉翁と西銀座万茶亭に夜をふかし馴れた頃、秋も既に彼岸を過ぎていた

この年銀座の表通は地下鉄道の工事最中で、夜店がなくなる頃から、凄じい物音が

震災後も待合や芸者家が軒をつらねていたが、銀座通にカフエーの流行り始めた頃から、次第に飲食店が多くなって、夜半

下さい。天気がよろしく候故御都合にて唖々さんもお誘い合され堀切へ参りたくと存候間御しる前からいかがに候や。御たずね申

。わたくしをして、然う思わせるだけでも、銀座や上野辺の広いカフエーに長年働いている女給などに比較したなら、お雪

取る時には、いつも隅田町郵便局の在るあたりか、又は向島劇場という活動小屋のあたりから勝手に横道に入り、陋巷の間を迂曲する

向島寺島町に在る遊里の見聞記をつくって、わたくしは之を※東綺譚と

際、成島柳北が下谷和泉橋通の賜邸を引払い、向島須崎村の別荘を家となしてから其詩文には多く※の字が

、これも久しからずして忘れられてしまった。現時向島の妓街に夢香荘とよぶ連込宿がある。小野湖山の風流を

。明治の初年詩文の流行を極めた頃、小野湖山は向島の文字を雅馴ならずとなし、其音によって夢香洲の三字

した事があったのを思出した。翁は銀座から駒込の家に帰る時、いつも最終の電車を尾張町の四辻か銀座三丁目の

行ったことがあった。その又前の年の夏には、赤坂見附の濠に、深更人の定った後、大きな蝦蟇が現れ悲痛な声を

て雀合戦のあった事をきいて、その最終の朝麹町の女達と共に之を見に行ったことがあった。その又

知り、二三度電車を乗りかえた後、洲崎の市電終点から日本橋の四辻に来たことがあった。深川の暗い町を通り過ぎた電車から

が古帽子をかぶり日光下駄をはいて毎夜かかさず尾張町の三越前に立ち現れたのはその頃からであった。銀座通の裏表に処を

月島小学校の女教師が夜になると銀座一丁目裏のラバサンと云うカフエーに女給と

あった。是より先、まだ残暑のさり切らぬころ、日比谷の公園に東京音頭と称する公開の舞踏会が挙行せられたことをも、

に行われたように言われていたが、内情は日比谷の角にある百貨店の広告に過ぎず、其店で揃いの浴衣を買わ

今年昭和十一年の秋、わたくしは寺島町へ行く道すがら、浅草橋辺で花電車を見ようとする人達が路傍に堵をなしているのに

「忘れていた。いいものがある。」とわたくしは京橋で乗換の電車を待っていた時、浅草海苔を買ったことを思い出し

も初めに比べると、だんだん苦にならないようになる。京橋と雷門との乗替も、習慣になると意識よりも身体の方が先

してわたくしは幾分なりと途中の時間まで短くしようと、京橋の電車の乗換場から地下鉄道に乗った。若い時から遊び馴れた身

地下鉄道は既に京橋の北詰まで開鑿せられ、銀座通には昼夜の別なく地中に鉄棒を

溝の蚊の唸る声は今日に在っても隅田川を東に渡って行けば、どうやら三十年前のむかしと変りなく、