町中の月 / 永井荷風
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わたし場は近年架橋の工事中で、近寄ることもできない。明石町の真中を流れてゐた堀割は、その両岸に茂つた柳の並木と、
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有様なので、わたくしが月を見ながら歩く道順は、佃のわたし場から湊町の河岸に沿ひ、やがて稲荷橋から其向ひの南高
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稲荷橋は八丁堀の流が海に入るところ。鉄砲洲稲荷の傍にかゝつてゐるの
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のである。それは月の冴渡つた冬の夜ふけ、深川がへりの若檀那が、馴染の船頭に猪牙舟を漕がせ、永代橋
て、その欄干に身をよせると、おのづからむかし深川へ通つた猪牙舟を想像し、つゞいて為永春水の小説春暁八幡佳年の
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灯火のつきはじめるころ、銀座尾張町の四辻で電車を降ると、夕方の澄みわたつた空は、真直
時間に散歩を兼ねて、日常の必要品を購ひに銀座へ出る。それ故明月を観るため、築地から越前堀あたりまで歩くのも
むかしは銀座通の東裏を流れてゐる三十間堀の河岸も、月を見ながら歩けるほど
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こともある。或はずつと高く歌舞伎座の上、或は猶高く、東京劇場の塔の上にかゝつてゐることもある。
東京の気候は十二月に入ると、風のない晴天がつゞいて、寒気も
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と酔漢とを避けるわづらはしさに堪へられない。築地川は劇場の灯火が月を見るには明るすぎる。鬨のわたし場は近年
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江戸時代から大きな船の碇泊した港で、今日でも東京湾汽船会社の桟橋と、船客の待合所とが設けられ、大嶋行の汽船が
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の若檀那が、馴染の船頭に猪牙舟を漕がせ、永代橋の下をくゞる時身投の娘を救上げ、稲荷橋へ来かゝると
闇の夜より月夜の方がこわい様だぜ。おやもう永代橋だの。」
てゐて、水際に渡海神社といふ小さな祠がある。永代橋に近くなると、宏大な三菱倉庫が鉄板の戸口につけた薄暗い灯影で、