断腸亭日乗 05 断膓亭日記巻之四大正九年歳次庚申 / 永井荷風
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第四巻の原稿を春陽堂に送る。この日より再び四谷のお房を召使ふことにす。
の妓にて、今は四谷警察署長何某の世話になり、四谷にて妓家を営める由。泊りがけにて来り余の病を看護す。
月三日。婢お房病あり。暇を乞ひて四谷の家に帰る。
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四月廿一日。快晴。午後写真機を携へ丸の内を歩む。
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、株式払込の用件を辨じ、東洋軒にて食事をなし、八丁堀を過ぎて家に帰る。戯に小説作法なるものを草す。午後春陽堂
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六月廿四日。曇る。午後氷川神社境内を歩む。日暮唖※子来る。相携へて木曜会に徃く。
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トつがひ十四円なり。先年大久保に在りし頃、九段阪小鳥屋にて買ひし折には七八円と覚えたり。物価の騰貴鳥に
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に一酌す。妓を自働車に載せ唖※子を本郷の家に送りて帰る。
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三月十一日。午後麻布に行く。帰途愛宕山に登る。春日遅々。夕陽白帆に映ず。藕花の的歴たるに似たり。
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購ふ。電車雑沓して乗り得ず。須田町に出で柳原を歩み両国を過ぎて家に帰る。
四月廿七日。松莚清潭の二子と両国の鳥安に会飲す。雨歇み月出づ。五月人形の市を見て帰る。
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の花咲出る頃行水して銀座に行き、晩食を食し、日比谷公園を過ぎて帰る。国訳漢文大系本戦国策を読む。虫始めて啼く。
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歇まず腹痛あり。懐炉を抱く。枕上アナトル・フランスの「巴里のベルジュレヱ」をよむ。
君余がレニヱーを愛読するを知り、其の新著出る毎に巴里の書肆に命じて郵送せらるゝなり。厚情謝すべし。
九月十五日。去年の暮注文したる書籍巴里より到着す。
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九月三日。午後金沢の今村君来り訪はる。其の令嬢今年二十二歳となり洋行したしと
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書斎につれ来りて打興ずるあたり最面白し。七年前大久保の旧宅改築の際、一頭の牝犬、余が書斎の縁側に上り来り
鸚哥を購ふ。一トつがひ十四円なり。先年大久保に在りし頃、九段阪小鳥屋にて買ひし折には七八円と覚え
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三月朔。朝日本橋第一銀行に赴き、株式払込の用件を辨じ、東洋軒にて食事をなし
四月四日。玄文社合評会なり。雨歇まず。日本橋通泥濘殆歩み難し。
十月廿七日。松莚子と日本橋末広に飲む。
十月廿九日。日本橋鴻巣亭にて上田博士追悼会あり。帰途雷雨。
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に白鴎羣をなして溝渠に浮び餌をあされり。曾て浅草代地河岸に住みし時、二月三月の頃には白鴎屡羣を
等一たびも耳にせし事なきを以て此夜浅草まで出向きしなり。近在百姓の盆踊と浪花節とを混じたるやうなものなり
九月廿二日。九穂致軒の二子と浅草公園に安木節を聴く。近頃市中の寄席また吉原など、到るところ安
あるを見、採り来りて庭に植ゆ。昨夜十一時浅草公園御国座焼亡せし由。
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三月九日。春風漸く暖なり。電車にて日比谷を過るに官衙の梅花咲き揃ひて、乱れ行く世のさまをも知ら
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三月十七日。筆意の如くならず。銀座を歩む。千疋屋店頭覆盆子を売るを見る。二月の瓜も今は珍重
おかめ笹印刷校正摺を閲し終る。細雨糠の如く、銀座街頭柳眼既に青し。
橋頭の酒亭に飲む。雲去りて雨歇み月出づ。銀座を歩みて再び清新軒に飲む。春陽堂この日江戸藝術論印税金を
四月十八日。日曜日なり。快晴。夜銀座を歩む。
十九日。快晴。袷着たき程の暖気となる。銀座にて偶然南部秀太郎に逢ひ、清新軒に飲む。
四月廿四日。快晴。風甚冷なり。夜銀座街頭にて葵山人に逢ひ清新軒に憩ふ。
日四谷姉の許に帰る。晩間九穂子と共に銀座清新軒に至りて飲む。帰途風冷にして星冴えわたりしさま冬夜の
痔疾一時再発の虞ありしが全く癒えたり。晩涼を追ひ銀座を歩む。虫屋にて邯鄲を買ふ。その価壱円なり。
七月廿七日。銀座松島屋にて老眼鏡を購ふ。荷風全集ポイント活字の校正細字のため甚しく視力を
あはたゞしくなりぬ。夕顔の花咲出る頃行水して銀座に行き、晩食を食し、日比谷公園を過ぎて帰る。国訳漢文大系本戦国策を
ず。喜ぶべきか悲しむべきか。日の暮るゝを俟ち銀座の風月堂に案内して倶に晩餐をなす。夜半大雨あり。
十月二十日。雨ふる。玉山酔客と銀座の清新軒に飲む。
青年会館に徃き、外国語学校語学練習演劇を看る。帰途銀座風月堂にて松莚子に逢ふ。
日。貯蔵銀行一昨日より取付に遇ひ居る由。余銀座の支店に少しばかり貯金あれど、今更如何ともすべき道なければ、本年厄落し
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四月七日。宿雨始めて晴る。神田仏蘭西書院に至り 〔Claude Farre`re〕 の小説三四巻を購
十月三十日。午後神田青年会館に徃き、外国語学校語学練習演劇を看る。帰途銀座風月堂にて
十一月十五日。晴れてあたゝかなり。神田仏蘭西書院にてジユール・ロマンの詩集「欧羅巴」其他数巻を購
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三月廿二日。曇りて蒸暑し。湖山人南総稲毛に在り。絵端書を寄す。夜、微雨。
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九月廿五日。新橋旧売茶亭の主人関口翁を訪ひ其懐旧談を聴く。
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氏とを竈河岸の八新に招飲す。此日午後市ヶ谷監獄署跡新開町焼亡すと云。
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堀の八百屋に張る。夕刻人力車を倩つて徃く。途上神田川の夕照甚佳なり。此の夜八百善の料理徃時の味なし。何の