横浜 吉野 堺 関東 石山寺 大阪 知恩院 島原 須磨寺 比叡山 奈良 京都 巴里 和歌山 東京 日本橋

違う。これは私の経験から云うのであるが、以前横浜の山手に住んでいて、日夕居留地の外人等と行楽を共にし

食べる時にちょっと蓼の葉で酢を振りかけるのである。吉野へ遊びに行った友人があまり旨いので作り方を教わって来て伝授して

たが、今日純日本風の町の情趣は、西宮、堺、和歌山、福山、あの程度の都市へ行かなければ味わわれない。食べる物で

しと／＼と降る雨の音を聴くのを好む。殊に関東の厠には、床に細長い掃き出し窓がついているので、軒端や木の葉

に何処がよかろう此処がよかろうと首をひねった揚句、結局石山寺へ出かけることに極めていると、十五夜の前日の新聞に石山寺では明晩

亡ぼすものは、無用に過剰なる照明にあると思った。大阪の通人に聞いた話に、文楽の人形浄瑠璃では明治になってからも

て来ての話に、欧洲の都市に比べると東京や大阪の夜は格段に明るい。巴里などではシャンゼリゼエの真ん中でもランプを燈す家

廻せる身分の者はいゝけれども、私などでも、たまに大阪へ出ると、此方側から向う側へ渡るのに渾身の神経を緊張させる。ゴース

なき業である。この調子だと、奈良でも、京都大阪の郊外でも、名所と云う名所は大衆的になる代りに、だん／＼

扉も壁も柱も殆ど見えないことすらある。これは知恩院や本願寺のような宏壮な建築でも、草深い田舎の百姓家でも同様であっ

はないであろうか。今日かくの如き婦人の美は、島原の角屋のような特殊な所へ行かない限り、実際には見ることが出来

もう数年前、いつぞや東京の客を案内して島原の角屋で遊んだ折に、一度忘れられない或る闇を見た覚えが

にした覚えがあるのは、或る年の十五夜に須磨寺の池へ舟を浮かべてみようと思い、同勢を集め重詰めを持ち寄って繰り出して

であろうか。彼処は北向きの高台に拠っていて、比叡山や如意ヶ嶽や黒谷の塔や森や東山一帯の翠巒を一眸のうちに集め、

私は、京都や奈良の寺院へ行って、昔風の、うすぐらい、そうしてしかも掃除の行き届い

適宜な釣り合いを保つのだ。われ／＼はよく京都や奈良の名刹を訪ねて、その寺の宝物と云われる軸物が、奥深い大書院

あまりと云えば心なき業である。この調子だと、奈良でも、京都大阪の郊外でも、名所と云う名所は大衆的になる

私は、京都や奈良の寺院へ行って、昔風の、うすぐらい、そうしてしかも掃除

京都に「わらんじや」と云う有名な料理屋があって、こゝの家

さと適宜な釣り合いを保つのだ。われ／＼はよく京都や奈良の名刹を訪ねて、その寺の宝物と云われる軸物が、奥深い

実にたまらない。例を挙げるのは少し気の毒だが、京都の都ホテルのロビーへ夏の晩に行ったことのある人は、私

心なき業である。この調子だと、奈良でも、京都大阪の郊外でも、名所と云う名所は大衆的になる代りに、だん

、田舎の町も鈴蘭燈などが取り附けられて、年々京都のようになるので、そう安心している訳には行かない。今

だと、側面の信号を正面の信号と見違えたりする。京都に交通巡査が立つようになってはもうおしまいだとつく／″＼そう

の都市に比べると東京や大阪の夜は格段に明るい。巴里などではシャンゼリゼエの真ん中でもランプを燈す家があるのに、日本で

先年、武林無想庵が巴里から帰って来ての話に、欧洲の都市に比べると東京や大阪の

、今日純日本風の町の情趣は、西宮、堺、和歌山、福山、あの程度の都市へ行かなければ味わわれない。食べる物でも

のは明治二十年代のことだが、あの頃までは東京の町家も皆薄暗い建て方で、私の母や伯母や親戚の誰彼など

て話したいのだが、もう数年前、いつぞや東京の客を案内して島原の角屋で遊んだ折に、一度忘れられ

から帰って来ての話に、欧洲の都市に比べると東京や大阪の夜は格段に明るい。巴里などではシャンゼリゼエの真ん中でもランプ

のように柔かくなっている工合が何とも云えない。東京の握り鮨とは格別な味で、私などにはこの方が口に合う

実際には見ることが出来ない。しかし私は幼い時分、日本橋の家の奥でかすかな庭の明りをたよりに針仕事をしていた