北海道 大阪 雷門 九州 両国 仙台 京都 下谷 深川 浅草 大久保 渋谷 東京 人形町 浅草橋 上野 浜町 田端 永代橋

己は随分旅行好きで、京都、仙台、北海道から九州までも歩いて来た。けれども未だこの東京の町の中に、

いる謎のような光景を見ると、何となく京都や大阪よりももっと東京をかけ離れた、夢の中で屡々出逢うことのある世界の如く

考えも有之候えば、九時より九時半までの間に雷門までお出で下されまじくや。其処にて当方より差し向けたるお迎いの車夫が、必ず

の二時頃迄遊んでは、また眼かくしをして、雷門まで送り返された。一と月も二た月も、お互に所を知ら

市街を走ってから、轅を下ろす女の家は、案外雷門の近くにあるのかも知れない。私は毎夜俥に揺す振られながら、此処

ように相乗りをして引き擦り廻されて居るうちに、雷門で俥がくるくると一つ所を廻る度数や、右に折れ左に曲る回数

もなくその塩梅を覚え込んでしまった。或る朝、私は雷門の角へ立って眼をつぶりながら二三度ぐるぐると体を廻した後、この

道は最初雷門から公園の外郭を廻って千束町に出て、龍泉寺町の細い通りを上野の

己は随分旅行好きで、京都、仙台、北海道から九州までも歩いて来た。けれども未だこの東京の町の中に、人形町で

で電車通りを越え、代地河岸を柳橋の方へ曲って、遂に両国の広小路へ出た。女が如何に方角を悟らせまいとして、大迂廻をやっていた

己は随分旅行好きで、京都、仙台、北海道から九州までも歩いて来た。けれども未だこの東京の町の

己は随分旅行好きで、京都、仙台、北海道から九州までも歩いて来た。けれども未だこの東京の

続いている謎のような光景を見ると、何となく京都や大阪よりももっと東京をかけ離れた、夢の中で屡々出逢うことのある

通りへ出ると、思いがけなくも、其処は毎晩夜店の出る下谷竹町の往来の続きであった。いつぞや小紋の縮緬を買った

も十一二歳の頃であったろう。父と一緒に深川の八幡様へ行った時、

に逃れ出ようと思い、方々と適当な隠れ家を捜し求めた揚句、浅草の松葉町辺に真言宗の寺のあるのを見附けて、ようよう其処の庫裡

それから私は、浅草の観音堂の真うしろにはどんな町があったか想像して見たが、

、自分の今眼を塞がれて通って居る処は、浅草から何の辺に方って居るのか、唯それだけを是非とも知っ

道は再び浅草区へ這入って、小島町から右へ右へと進み、菅橋の近所で電車

私は最初から、渋谷だの大久保だのと云う郊外へ隠遁するよりも、却って市内の何処かに人

私は最初から、渋谷だの大久保だのと云う郊外へ隠遁するよりも、却って市内の何処

の中に、人形町で生れて二十年来永住している東京の町の中に、一度も足を蹈み入れた事のないと云う

、北海道から九州までも歩いて来た。けれども未だこの東京の町の中に、人形町で生れて二十年来永住している東京の

な光景を見ると、何となく京都や大阪よりももっと東京をかけ離れた、夢の中で屡々出逢うことのある世界の如く思われた

随い、知人の家を訪ねたり、花見遊山に出かけたり、東京市中は隈なく歩いたようであるが、いまだに子供の時分経験した

の親友であった「派手な贅沢なそうして平凡な東京」と云う奴を置いてき堀にして、静かにその騒擾を傍観し

れている。唯これだけの眼界では、この家が東京のどの辺にあたるのか、大凡その見当すら判らなかった。

、私は妙な好奇心から、自分を乗せた俥が果して東京の何方の方面に二人を運んで行くのか、自分の今眼を塞が

て来た。けれども未だこの東京の町の中に、人形町で生れて二十年来永住している東京の町の中に、一度も

通ったことのない区域が到る処に発見された。浅草橋と和泉橋は幾度も渡って置きながら、その間にある左衛門橋を渡っ

外郭を廻って千束町に出て、龍泉寺町の細い通りを上野の方へ進んで行ったが、車坂下で更に左へ折れ、お徒

をやっていたかが察せられる。薬研堀、久松町、浜町と来て蠣浜橋を渡った処で、急にその先が判らなくなっ

二三日過ぎてから、急に私は寺を引き払って田端の方へ移転した。私の心はだんだん「秘密」などと云う手ぬるい

地面は、一度も蹈んだ覚えはなかった。昔の永代橋の右岸の袂から、左の方の河岸はどんな工合になって居た