恐怖 / 谷崎潤一郎

恐怖のword cloud

地名一覧

愛宕山

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の周囲へにじみ込むのを覚えた。五条の橋から遥に愛宕山を望むと、恰も熔鉱炉の底から煽り上る熱気に似た陽炎が麓に打ち煙っ

大阪

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生憎京都の近所はみんな時期が遅れて間に合わなかったが、大阪の住友銀行の友人O君の盡力で、阪神電車の沿道にある一漁村へ、検査

何台も何台もぶうッ、ぶうッと警笛を鳴らしつゝ大阪の方から走って来て沢山の乗客を吐き出して、入れ代りに多勢の人数を

乗客を吐き出して、入れ代りに多勢の人数を積み込むと、再び大阪の方へ引き返して行く。二三分置きに次から次へと、幾回も

「ナニいゝんだ。己は人を待ち合せて、大阪へ行くんだから。」

拂いながら矢張りいつまでも腰を掛けて居た。「大阪へ行くんだから。」と答えたのが、自分には何だか、

罪と罰』の中の Svidrigailoff のように、「私は大阪へ行くんだから。」と云って、忽ち眼を舞わして此の場へ

へ乗り込んだら、どうにかした拍子に気が紛れて大阪まで無事に行けるだろうと思ったのである。

も萬難を排して、即刻一瞬の猶豫もなく、大阪へ出発しなければならない。

けれども若し、大阪へ行かれないで、電車の中で卒倒するような事があったら……

「ちょいと大阪まで………」

、丘陵がどんどん走って居た。ひょッとしたら、無事に大阪へ着けるかも知れないと云う安心が、其の時漸く私の胸に芽ざ

加茂川

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林はもやもやと霞に曇り、近い町々の甍や石垣や加茂川の水は、正視するに忍びない程、クッキリした、強い色彩に染られ

京都

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してやっとこさと恢復し切って居たのだ。それが京都へ来てから、再び不秩序な生活に逆戻りした結果、知らず識ら

此の夏中に受けなければならない徴兵検査を、何処か京都の近在で、汽車へ乗らないでも済む所で受けたいものだと思っ

ブリ返して居る事を心付いたのは、六月の初め、京都の街の電車に揺られた時であった。私は当分、汽車へ乗る

調べて見ると生憎京都の近所はみんな時期が遅れて間に合わなかったが、大阪の住友銀行の友人O

真夏らしい日光がきらきらと、乾燥した、埃の多い京都の街の地面に反射し、晴れた空が毒々しく油切って、濃い藍色

左右の窓には、京都の市街が盡きて、郊外の青葉や、樹木や、往還や、丘陵が

東京

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て居た前後であった。―――尤も其の以前、東京に居る頃も一度ならず襲われた覚えはあるが、禁酒をしたり

を絶対に断念して、病気の自然に治癒する迄、東京へは帰れないとあきらめて了った。そうして、是非共此の夏中

兵庫県下なら、汽車へ乗らずとも電車で行けるから、東京の原籍地へ戻るよりはいくらか増しだと私は喜んだ。で、

、どうしても最近に原籍地の検査日までに、東京へ帰らなければならない。

になるか、死ぬかしますから、検査までにはとても東京へ行かれません。」

真面目に思案して見て、死ぬか、狂うか、当分東京へ戻らずに居るか、此の三つ以外に差しあたっての道はない

日本橋

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は喜んだ。で、丁度月の十二日の午ごろ、日本橋の区役所から取り寄せた戸籍謄本と実印とを懐にして、五条の停車場へ