猫と庄造と二人のをんな / 谷崎潤一郎
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ですつくりやられてしもてん。それより僕、久し振りで有馬へ行つてみたいねんけど、どうや、賛成せエへんか。」
、或る日瀧道の終点で落ち合ひ、神有電車で有馬へ行つて、御所の坊の二階座敷で半日ばかり遊んで暮らしたことが
「有馬へ紅葉見に行きまんね。」
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伯父と云ふのは菓子の製造販売をしてゐて、今津の町に小さな工場を持つてゐたばかりでなく、国道沿線に五六軒の
ないやうに狼狽へてゐたことがあつた。母親が今津の福子の家から迎ひを寄越して、庄造に呼び出しをかけたりすると、
ことがあつたのを思ひ出した。庄造も、母親も、今津へ出かけたきり帰らないので、一人ぼつちでお茶漬を掻つ込んでゐる
福子が午後の四時過ぎに、今津の実家へ行つて来ると云つて出かけてしまふと、それまで奥の縁側で
おりんの経験だと、福子はいつも今津の家へ行つて来た当座、つまり懐にお小遣のある五六日か一
一番割が悪いことになる。だからおりんは、福子が今津へ駈け付ける度に、やれ/\これで当分は安心だと思つて、内々
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も、もう此の頃でも夜は相当に冷え込むので、同じ阪神の間でありながら、何だか遠い山国へでも来たやうな気が
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「宝塚、今月は何やつてるやろ?」
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阪神電車の沿線にある町々、西宮、蘆屋、魚崎、住吉あたりでは、地元の浜で獲れる鰺や鰯を、「鰺の取れ
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落ち着かない。家出をしたことも二度ぐらゐあつて、神戸の新聞に素ツ葉抜かれたりしたものだから、縁付けようと思つて
てゐたのであつた。元来リヽーと云ふ猫は、神戸の洋食屋に住み込んでゐた庄造が帰つて来る時に連れて来たの
つてゐるのである。たとへば庄造は、初めて此の猫を神戸から連れて来た日のことをはつきりと思ひ出すのであるが、それ
新国道へ上ると、つい業平橋を渡つて、ハンドルを神戸の方へ向けた。まだ五時少し前頃であつたが、一直線に
「神戸へ行かして貰ひまつせ。」
やうどさう云ふ平和な一週間が始まつてゐたが、神戸へ行つてから三四日たつた或る日の夕方、亭主と二人晩飯のチヤブ
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阪神電車の沿線にある町々、西宮、蘆屋、魚崎、住吉あたりでは、地元の浜で獲れる鰺や鰯を、「鰺の取れ/