薩摩 鞍馬 京都 目白 住吉 千住 日暮里

おもひおもひの扮粧して、縮緬透綾の伊達もあれば、薩摩がすりの洗ひ着に黒襦子の幅狭帯、よき女もあり男もあり

ば近道の土手々前に、仮初の格子門、のぞけば鞍馬の石燈籠に萩の袖垣しをらしう見えて、椽先に巻きたる簾の

我が力の無いは忘れて、信如は机の引出しから京都みやげに貰ひたる、小鍛冶の小刀を取出して見すれば、よく利れそう

私立なれども生徒の数は千人近く、狭き校舎に目白押の窮屈さも教師が人望いよいよあらはれて、唯学校と一ト口にて

よかよか飴や軽業師、人形つかひ大神楽、住吉をどりに角兵衛獅子、おもひおもひの扮粧して、縮緬透綾の伊達もあれば

わるやにたにたの笑ひ顔、坂本へ出ては用心し給へ千住がへりの青物車にお足元あぶなし、三嶋様の角までは気違ひ

もそぞろ哀れの音を伝へるやうに成れば、四季絶間なき日暮里の火の光りもあれが人を焼く烟りかとうら悲しく、茶屋が裏ゆく