シベリア 高野山 福島

手紙や、慰問袋を兵営から病院へ持ってきた。シベリアに居る者には、内地からの切手を貼った手紙を見るだけでもたのしみ

なかった。丈夫で勤務についている者は、いつまでシベリアにいなければならないか、そのきりが分らないのだ。

ことはさせまい。――このうちから幾人かはシベリアに残されるんだ。」さきから這入っている者はそういうことを考えた

「俺ゃシベリアに残される、その一人に入れられやしないかな？」心でそれを

孤児じゃないんだ！　それを、どうしてこんな冷たいシベリアへやって来たんだ！　どうして！……彼は嘆息した

の真綿がある。石鹸、手拭、カキモチが這入っている。高野山の絵葉書に十銭札を挟んである。……それが悉く内地の匂いに

「福島はどうでしょうか、軍医殿。」

た。平気でねているのは、片脚を切断した福島と、どうせ癒る見込みがない腹膜炎の患者だけであった。