入江のほとり / 正宗白鳥

入江のほとりのword cloud

地名一覧

四国

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た。そこからは曲りくねった海を越し山を越して、四国の屋島や五劒山が微かに見えるのだが、今日は光が煙って海

高野山

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の峰へ廻って、それから山越しで吉野へ出て、高野山へも登ってみたいよ。足の丈夫なうちは歩けるだけ方々歩いとかなきゃ

大阪

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「どこへ行っても枯野で寂しい。二三日大阪で遊んで、十日ごろに帰省するつもりだ」と筆でぞんざいに書いて

てきなさいな。家の者は男は皆な東京や大阪や、名所見物をしとるし、温泉へも行ったりしとるのに、辰

てこなかった。「もう四五日遊んで帰る」と、大阪の市街を写した絵葉書を寄越した。

が、歳を取ったらおれる所じゃない。田地まで売って大阪や神戸へ行った者が、よくみい、たいていは失敗ってヒョコヒョコ戻ってくる

奈良

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長兄の栄一が奈良から出した絵葉書は三人の弟と二人の妹の手から手へ渡っ

何にもならんさ」良吉はそっけなく言って、「今時分は奈良も寒くってだめだろうな。わしが行った時は暑くって弱ったが、

には青い机掛けが掛って、その上には木彫の奈良人形と、亡妹の写真を挿んだ写真立があった。毛糸のランプ敷

岡山

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のじゃから、兄弟じゅうで一番時代遅れの田舎者だ。勝は岡山まで汽車に乗ってさえ頭痛がするのに、東京まで何百里も乗ったら

神戸

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近い話が寺の坊主からして、わざわざ損をしに神戸へ投機をやりに行くというありさまだもの」

歳を取ったらおれる所じゃない。田地まで売って大阪や神戸へ行った者が、よくみい、たいていは失敗ってヒョコヒョコ戻ってくるじゃ

「家の者も東京なり神戸なり、出て行く以上は、その土地土地に一生落着くことにして、

高松

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昔は兄弟は近い処におるのがええと言うて、高松の伯父さんなぞはすぐ裏の地続きに、自分の家と間取りから柱の

東京

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しとらんのじゃから、気の毒に思われる。自分では東京へ行ってみたいとも思わんのかな」

旅行してきなさいな。家の者は男は皆な東京や大阪や、名所見物をしとるし、温泉へも行ったりしとるの

「勝はどこも見物などしとうない。東京へ行っても寄宿舎の内にじっとしていて、休日にも外へ

「わしが東京にいる間に来りゃよかったのに。下宿屋に泊ってて電車で見物すりゃ

かもしれんから、心配でならんがな。その代り東京へ行ったら、三年でも四年でも家へは戻らんつもりだ

勝は岡山まで汽車に乗ってさえ頭痛がするのに、東京まで何百里も乗ったら卒倒するかもしれんから、心配でならんが

分らない東京へ行ってマゴマゴすると思うと心細くなるだろう。東京のいい家では、つい近所へでも若い女一人外へ出しやし

。自分の村でさえ出歩けない者が、方角も分らない東京へ行ってマゴマゴすると思うと心細くなるだろう。東京のいい家では、

「僕は東京の下宿にいた時には、五燭の球を外して、二十五燭

と言張った。そして、博覧会見物に行った際に見た東京のイルミネーションの美しさを語った。良吉もそれに相槌打った。

二階では良吉と勝代とが炬燵に当って、ひとしきり東京話を聞いたり訊かれたりしていたが、やがて別々の部屋に別れ

かもしれんな。来年高等学校を卒業したら、なるべくなら東京の大学に入れるような方法を取りなさいよ」と、勝代は兄の寝床

取り方も自己流で世間には通用しそうでない。二年間東京の英語学校で正則に仕上げてきた良吉にしばしば「田舎で語学を勉強

て、ほかの思いに疲れた。深夜も白昼のような東京で、落第した自分がモルヒネか何かの毒薬を飲んで自殺する悲しい

戻ったと思うと、すぐにまた行ってしまうんでしょう。東京で暮らすよりゃ田舎に住んでおる方が仕合せだと、よく手紙に書いて

「栄さんが春まで家におってくれると、勝も東京へ随いて行けるのじゃけれどな、戻ったと思うと、すぐにまた行っ

勝代が、上京心得といったようなことを書いてある東京の友だちの手紙を母に読んで聞かせて、母子が炬燵に差向いで

この女も東京言葉を勉強しに、高い資本を費うて東京の学校へ入っとるのかい」

「この女も東京言葉を勉強しに、高い資本を費うて東京の学校へ入っとるのか

な。ここにおる者でも、手紙にはお互いに東京言葉を使うとるんじゃもの」

「……東京の女子もへんてこな言葉を使うぜ。ちょっと道を訊いても、べらべらと

「東京の人はいったい口が早いんじゃろうか」勝代はふとまじめに尋ねた。

「家の者も東京なり神戸なり、出て行く以上は、その土地土地に一生落着くことにし

まだ癒っていないことを家の者に知られて、東京行を引止められるかもしれないのが恐ろしくて、腹を圧えて呻きながら

年も早く決心して、強硬に親爺に説きつけたなら、東京に英語研究に行けんことはなかったろうに。勝代さえ行くようになった

二十未満の女が小説で知っている東京に憧れて、東京の何とかいう英語学校へ入って、学問で身を立てて、一生

を述べなかった。二十未満の女が小説で知っている東京に憧れて、東京の何とかいう英語学校へ入って、学問で身

気風について話をしてやるでもなく、妹の東京行について一口も明らさまに可否の意見を述べなかった。二十未満の

をば、きわめて淡く見過していた。妹の聞きたがっている東京の女学校や女学生の気風について話をしてやるでもなく、

を垂れたりして煩くって困ったよ。それが一人で東京へ行くようになったのだから、わしも知らない間に歳を取っ

「わしが初めて東京から帰ってきた年に大病に罹って座敷で寝てると、勝が

でも揃うとって、旅行なぞせいでもよかろうにな。東京でさえ年じゅういると単調になるじゃろうか。勝は去年の春から家の

「東京で暮すとすれば、見る物聞く物が何でも揃うとって、旅行

「これでは冬籠りもできないね。早く東京へ帰ることにしようか」と、栄一は故郷の様子を見ただけで

「……田舎者よりゃ東京生れの人の方が英語の発音が早く上手になるんでしょう」

。……勝も東京へ行って三月もすると、東京言葉を使って田舎者をばかにするようになるだろうな」栄一はそう言っ

「そんなばかなことがあるものか。……勝も東京へ行って三月もすると、東京言葉を使って田舎者をばかにする