本郷 小石川 蒲原郡 根岸 仙台 東京 小川町 神田

、雪江一代の智慧を絞り尽して、其翌日の昼過ぎ本郷の一友人を尋ねて、嘘八百を陳べ立て、其細君を誘かして半襟を

それは小石川の伝通院脇の下宿に居る時であった。此下宿は体裁は余り好く

ばならん。が、小店だと、相手が越後の国蒲原郡何村の産の鼻ひしゃげか何かで、私等が国さでと、未だ

に住って閑雅な生活をしているだろうと思って、根岸の其宅を尋ねて見ると、案外見すぼらしい家で、文壇で有名な大家の

んでしたもの。好加減なチャラッポコを真に受けて、仙台くんだり迄引張り出されて、独身でない事が知れた時にゃ、如何様に

私ではない。私は疾うに極めていた、無論東京へ行くと。

昨日や今日の事でないから、何でも角でも東京へ出たいのだが、さて困った事には、珍しくもない話だ

も地方育ちの青年だから、誰も皆思うように、東京へ出て何処かの学校へ入りさえすれば、黙っていても自然

東京は如何な処だか人の噂に聞く許で能くは知らなかったが、

父の言葉に無理もないが、しかし……私は矢張東京へ出たい。

か糊塗なっていたのだ。だから到底も私を東京へ遣れないという父の言葉に無理もないが、しかし……私は

のは解っているけれど、しかし私は如何しても矢張東京へ出て何処かの学校へ入りたい。

て、自暴を起し、或夜窃に有金を偸出して東京へ出奔すると、続いて二人程其真似をする者が出たので

懇意にする去る家の息子が、何処のも同じ様に東京行きを望んで、親に拒まれて、自暴を起し、或夜窃に

東京へ着いたのは其日の午後の三時頃だったが、便って

声に驚いて、到頭言いなり次第の賃銭を払って、東京という処は厭な処だと思った。

君の年配では伯父さん伯母さんでは可笑しい。これは東京の習慣通り、矢張私の事は先生と言うたら好かろう。先生、此方が

雪江さんは国産れでも東京育ちだから、

もう何にも言わぬ、お前の思う通りにしろだが、東京へ出てから二年許りの間に遣った金は、地所を抵当に

に入れたから、下宿へも帰らず、其足で直ぐ東京を発って、汽車の幾時間を藻掻き通して、国へ着いたのは

の葬式を済せてから、母を奉じて上京して、東京で一戸を成した。もう斯う心機が一転しては、彼様な

「小川町の勧工場で。」

知らなかった。これの知り初めが即ち此春色梅暦で、神田に下宿している友達の処から、松陰伝と一緒に借りて来て