難波 横浜 関東 京都 長崎 東京 亀戸 大塚 市ヶ谷

。妻が取次に出ると、自分は山口県熊毛郡岩田村の難波といふ者だが、東京から帰国の途中、旅費がなくなつて困つて

ゐる村の名であるとは思つたが、その親戚に難波といふ家のあることには気付かなかつた。青年は之を先生に

で、相当面倒なことになつたかも知れない。しかし難波が近い親戚を差しおいて先づ私の所を訪ねたのは、「断片」

一旦郷里に帰つた難波は、例のステッキを携へて再び上京し、年末の十二月二十七日、議会

内容は一切極秘に附せられて居たにも拘らず、難波の陳述中に「断片」が自分のために最後の決意をなさしめたと

無数であるが、その数多き被告の中で、自分は難波くらゐしつかりした男を見たことがない、と言つた。大逆人と目

ついて彼がこのやうな事を書いてゐるのは、難波の態度がよくよく立派なものであつたことを思はしめる。（その文章は、

――側のベットに寝てゐた一人の受刑者から、難波のために墓を掘つた日の出来事を、委しく聞くことが出来た。

難波が死刑に処せられたのは、恐らく市ヶ谷監獄であつたであらう。小菅に

があつて、そこにこの刑務所附属の墓地があつた。難波の屍体はそこへ葬られたのである。当時は社会主義者の一味が途中を

最後に私は難波に対する判決文のことを書いておかう。裁判は傍聴禁止のもとに極秘の

は彼の名誉のため厳粛な歓迎会を催し、また彼が横浜を立つ前には特に送別会を開いた。）私はそこへ、「暗殺さ

」が出てから二ヶ年余り過ぎた頃のこと、）関東に大震災が起つて、東京は忽ち焼野原となり、夥しい人々が惨死を遂げ

京都帝大の経済学部教授をしてゐた頃、大正九年九月の新学期

余裕は有つて居なかつたのだが。）で、京都に帰つてから、二月に私はそれを材料にして「断片」

、退官後は満洲建国大学の副総長となつた人）を京都帝大に迎へるため、校長に直接談判をしに出掛けたのである。

山口高等商業学校の教授であつた作田荘一君（後に京都帝大の教授となり、退官後は満洲建国大学の副総長となつた人）

の電報が来た。同僚の河田嗣郎君が同じことを京都から打電されたものである。

からの自著の引上げ並びに絶版を決行する習はしである。京都帝大の経済学教授では、ずつと以前に河田嗣郎氏が、近頃では石川

退官後、貴族院議員に勅選された人。同君が京都帝大経済学部の講師を辞し、初めて衆議院議員の候補者に打つて出た時は、

の間において物議の種子となつた。私が以前京都で懇意にしてゐた滝正雄君は、（後に近衛内閣の時

に大正の初年に起された同盟辞職の威嚇によつて京都帝大の贏ち得た研究の自由は、牢乎として此の大学の伝統と

に居た私の末の弟、左京に旨を含めて京都まで知らせに寄越した。手紙に書くことをすら用心したのである

といふことが、明記されて居るのである。以前京都帝大の教授をしてゐた頃、親しくしてゐた同僚の一人で

つい近頃のことである、京都帝大経済学部の教授石川興二君は、その著書に禍されて休職になつ

を経由し、仏国に渡つてから病死した。彼が長崎から東京に行つた折には、日本の社会主義者は彼の名誉のため厳粛

校長に直接談判をしに出掛けたのである。同君は東京帝大の出身であり、当時はまだ纏つた著述も出されて居ず、

は私を吉田二本松の寓居に送り込んだ。それから私は東京方面の情報を聴いたに相違ないのだが、どんな話を聞いたの

、私はさう思つたのである。ところが改造社は東京から一人の記者を寄越して、この小切手だけは納めておいて貰はぬ

今度は東京の情勢や地理などを研究するために、暫く東京に出てゐた。

をした。そして漸く自信を得たので、今度は東京の情勢や地理などを研究するために、暫く東京に出てゐた。

余り過ぎた頃のこと、）関東に大震災が起つて、東京は忽ち焼野原となり、夥しい人々が惨死を遂げ、損害は五十五億円の

彼は愈※その宿志を決行するため、震災後東京を立つて郷里に向つた。例のステッキを取りに帰つたのである

、自分は山口県熊毛郡岩田村の難波といふ者だが、東京から帰国の途中、旅費がなくなつて困つて居るから、一時取り替

を勤めてゐたが、事の重大なるを憂慮し、東京に居た私の末の弟、左京に旨を含めて京都まで知らせ

し、仏国に渡つてから病死した。彼が長崎から東京に行つた折には、日本の社会主義者は彼の名誉のため厳粛な歓迎会

幹部であつた平沢計七、河合義虎等数名の者も亀戸で惨殺され、更に無名の朝鮮人で何の謂はれもなく惨殺され

あることが分かつた。初めてその事を聞き知つた義兄の大塚武松は、当時文部省の維新史料編纂官を勤めてゐたが、事の

にも思はなかつた。しかし難波家は、私の義弟大塚有章が養子に行つてゐる国光家と姻戚関係があつたので、予審

難波が死刑に処せられたのは、恐らく市ヶ谷監獄であつたであらう。小菅には死刑台の設備はなかつた。しかし