箱根 舞鶴城 駿府 大井川 江戸 霞が関 清見寺 福岡 千葉 浅草

箱根を越えるうちに平馬は、若侍の事をサッパリと忘れていた。

とつぶやきながら平馬は、黒い森に包まれた舞鶴城を仰いだ。

駿府にはわざと泊らず、海近い焼津から一気に大井川を越えて、茶摘歌と

駿府にはわざと泊らず、海近い焼津から一気に大井川を越えて、茶摘歌と揚雲雀の山道を見付の宿まで来ると高い杉森の

は日帰りする足じゃからのう……きょうも焼津から出て大井川で、したたか手間取ったのじゃが……」

「……手前ことは江戸、下六番町に住居致しまする友川三郎兵衛次男、三次郎矩行と申す未熟者…

状を盗みました掏摸の女親分で御座いまして、当時江戸お構いになっておりました旅役者上りの、外蟇お久美と申しまする者が

その空屋同然の古屋敷に落付く事になると、賑やかな霞が関のお局や、気散じな旅の空とは打って変った淋しさ不自由さ

その名前を御存じではあったろうが、何にせい相手が霞が関の黒田藩となると事が容易でないからのう」

「ハイ。このあいだ、清見寺の和尚様が見えました時に、主人が建てました」

佐五郎の事も忘れてしまって文字通り帰心矢の如く福岡に着いた。着くと直ぐに藩公へお眼通りして使命を果し、

が斬られたという五月の頃おい、拙者はまだこの福岡に在藩しておったからのう……ハハハ。とんと話にならん

が、病弱で物にならぬ。その代り弟の方が千葉門下の免許取りであったからそれに御免状が下がった……

てみたればそれは無い。在るには在ったが、浅草観世音の境内で懐中物と一所に掏られてしもうたと云うのじゃ」