本郷 金杉 湯島天神 深川 飯田橋 麹町 九段下 東京 月島

みると、金兵衛は昨日の夕方、夕飯を喰ってから、本郷の無尽講の計算に行って来ると云って、預っていた旧式の帳面と

。金兵衛さんの事までもスッカリ……毎月二十五日が本郷の無尽講の寄合なので、帳面とお金を持って行かれる。その帰りに

……といったようなお話で、お宅は芝の金杉という事でしたが……それはそれは御親切な……」

も居ない。その中でも、二十五日の晩に、湯島天神の境内に集まっていた無尽講の世話人連中は、肝腎の帳面と金を

朝になって、番頭と若い衆が、その日の中に深川の製材所から河岸に着く筈になっている樅板の置場を見に

「昨日、伯父さんの法事をしに深川へまいりました」

ナニ。一緒に乗った職工かい、ウン知ってるよ。深川の紫塚造船所の製図引で大深泰三という男だよ。社会主義者の嫌疑で

で懐手をしたまま、自分の家の材木置場から、飯田橋の停車場の方へ抜けて行く途中の、鋸屑のフワフワ積った小径の上

も知れないが、仕事が閑散だったせいだろう。最初に麹町署から来た四五人のほかに警視庁の第一捜査係長、刑事

…という理窟から遠い親戚や無尽講の関係者、又は九段下界隈の前科者や無頼漢なぞを出来るだけ念入りに洗ってみたが、これとても

ドレ位積み重なっているか知れないのだよ。しまいには九段下から大手あたりのお堀へかけての大捜索まで遣ってもらったが、

はコレ一つ……兇器さえ見付かればこっちのもの……東京市中を持ちまわって、一軒一軒虱潰しに出所を調べてまわって

何でも、信州の或るお金持の御養子さんで、東京へ来て高等工業学校へ這入ったが、養家が破産したために学校

「アッ。月島の渡船に乗ったんだね。成る程成る程。その時にアンタと一緒に

何だ何だ……ウンこの婦人かい。昨日月島の渡船場で一緒に乗ったよ。どうかしたんかい……ナニ